「一帯一路」経済圏
「一帯一路」は、2014年に提唱された中国の経済圏構想だ。詳しく言うと「一帯」と「一路」の2つの経済圏に分かれる。
一帯 | 中国から中央アジア、欧州へと連なる「陸のシルクロード経済圏」 |
一路 | 中国沿岸部から東南アジア、インド、アフリカ、中東、欧州と連なる「海のシルクロード経済圏」 |
今回の貨物定期輸送は、「一帯」(陸のシルクロード経済圏)を通過するルートを通る。
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中国・欧州直通貨物列車
中国は2017年1月1日、中国浙江省とイギリス・ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行を開始した。
運行距離は約1万2000kmで、所要日数は18日間~21日間かかる。船便で中国からヨーロッパへは30日~35日かかっているので、輸送時間の短縮が期待される。
コスト
輸送運賃は航空便の1/3~1/5と安いが、船便よりは10%~20%高くなる。
デメリット
鉄道ということで、線路状態が悪いと振動があり、精密機械の運搬には向かない可能性がある。実際、2017年1月1日の貨物の多くは衣類だった。
途中通過する国が多いので、それぞれの国で通関に時間・日数がかかる可能性がある。船便の場合は公海上を航行するので途中に通関する必要はない。
また、冬期は中央アジアの気温は低く低温対策したコンテナが必要になる可能性がある。中国から欧州に送る貨物は多いが、逆に欧州から中国に送る貨物が少ない可能性がある。
将来性
運行距離約1万2000km、所要日数18日間で計算すると、時速27kmとなる。もちろん、途中の通過国で通関日数がかるため、実際の走行速度はそれよりも速い可能性がある。
今後、平均時速50kmまで速度を上げると24時間で1,200km走行できる。中国から
イギリス・ロンドンまでは1万2000kmなので、所要日数は「10日間+通関日数」と大幅に短縮される可能性がある。
日本の対抗策
ロシア・シベリア鉄道経由での所要日数
ウラジオストック~モスクワ | 7日 |
モスクワ~パリ | 3日 |
パリ~ロンドン | 1日 |
合計 | 11日 |
この11日は旅客便の場合で、貨物列車の場合、通関や途中の積み替えなどで、15日程度かかると思われる。
サハリン経由シベリア鉄道
2016年10月ロシアが日本に提案してきた構想で、シベリア鉄道を極東で2路線に分岐し、1つをサハリン経由で北海道までつなげる構想。
しかし、サハリンと北海道の間には宗谷海峡42kmがあり、海底トンネルを建設する必要がある。また、現在の青函トンネル(北海道と本州間)は新幹線と貨物列車が共用していることから新幹線のトンネル内の最高速度が時速140kmに制限されるなど課題がある。
これを解決するには、第2青函トンネルを新規で建設することが必要で、1兆円~2兆円の建設費が必要となる。
北極圏航路
現在、日本から欧州への船便は東南アジアを経由して、スエズ運河経由で約2万1000kmの航海距離で約30日かかる。しかし、温暖化の影響で北極圏を航行できる可能性があり、このルートは約1万3000kmで、約20日を大幅に輸送日数を短縮できる。
しかし、冬季は航行できない可能性がある。また、船も低温に適した専用船になる可能性があり、通年で運航できないことから逆にコストがかかる場合もありえる。実現可能性は薄い。
まとめ
現時点では、中国の内陸部から中央アジア経由で欧州に至る限定的な鉄道輸送ルートにすぎず、このルートがメインの輸送ルートになることはない。しかも、所要日数はロシア・シベリア鉄道経由ルートと同等程度かそれよりも遅い。
しかし、今後、経由国の鉄道の高速化、通関時間・日数が短縮されると、中国から欧州への輸出の主要ルートの一つになる可能性もある。