新型FFM
日本の海上防衛の主力となる護衛艦。その中でも「もがみ型(FFM)」は、省人化やステルス性に優れた最新鋭の多機能フリゲートとして注目されています。すでに8隻が就役し、2027年3月に12隻がすべて就役する予定です。
防衛省はさらに改良を加えた「新型FFM(FFM改とも、FFM-2とも呼ばれる)」の建造を進めており、2025年度に建造を開始し、2028年度に就役する見込みです。では、もがみ型と何が違うのでしょうか?そのポイントを表で整理しつつ、詳しく解説します。
新型FFMの武装
- 12式地対艦誘導弾(SSM)能力向上型
- 23式艦対空誘導弾
- VLS(垂直発射装置)32セル
- 洋上監視用の小型UAV(無人航空機)
- USV(水上無人機)
- UUV(無人水中航走体)

項目 | もがみ型FFM | 新型FFM(FFM改/FFM-2) | 差分の要点 |
---|---|---|---|
全長 | 約133m | 約142m | +11m |
満載排水量 | 約5,500トン | 約6,200トン | 約+700トン |
基準排水量 | 約3,900トン | 約4,880トン | 約+980トン |
最大速力 | 約30ノット | 約30ノット | 変更なし |
エンジン方式 | CODAG方式(ガスタービン1基+ディーゼル2基) | CODAG方式(ガスタービン1基+ディーゼル2基) | 変更なし |
乗員 | 約90名 | 約90名 | |
ステルス性 | 高い | 維持・一部形状変更 | 改修による最適化 |
主砲 | 62口径5インチ砲×1門 | 62口径5インチ砲×1門 | 変更なし |
VLS(垂直発射装置) | MK41 VLS(16セル) | 32セル | 火力強化・即応性向上 |
対艦ミサイル | 17式地対艦誘導弾(SSM2)4連装発射筒×2基 | 12式地対艦誘導弾(SSM)能力向上型 | |
近接防空ミサイル | SeaRAM | SeaRAM | |
ヘリ運用 | SH-60K×1機 | 哨戒ヘリ×1機+(UAV飛翔型センサ) | |
機雷戦能力 | 機雷の掃討能力
簡易型機雷敷設装置 |
機雷の掃討能力
簡易型機雷敷設装置 |
|
無人機運用 | UUV(水中無人機)機雷探知用の水中無人機「OZZ-5」
USV(水上無人機) |
UUV(水中無人機) USV(水上無人機) |
将来戦対応の強化 |
建造数 | 12隻(年間2隻) | 12隻(年間3隻) | |
建造費 | 457億円~584億円 | 1050億円 | |
初号艦就役 | 2022年「もがみ」 | 2028年以降(予定) | 配備サイクル更新 |
新型FFMでは全長が約11メートル延長され、基準排水量も980トン増加しています。これにより、艦内の作業スペースや格納庫が広がり、将来的な装備の拡張や長期間の洋上作戦への対応が可能になります。
設計段階から複数の任務(対潜、対空、機雷戦)を想定しており、より高機能な汎用護衛艦として位置づけられています。
もがみ型には、Mk.41 VLS(16セル)が搭載されていますが、新型FFMには32セル搭載されます。
もがみ型は既にUUV(無人潜水機)やUSV(無人水上艇)の運用能力を備えていますが、新型FFMではこの部分にも強化が加えられます。具体的には以下のような改良が見込まれています。
- 格納スペースや整備エリアの拡張
- 操作システムの統合化と自動化
- 長期運用に耐える電力・通信設備の強化
さらに、乗員の増加に対応するため、居住空間の快適性や指揮通信機能の強化も行われ、長期任務への適応力が高まります。
防衛省が新型FFMの開発に踏み切った背景には、以下のような理由があります
- 南西諸島や台湾有事を見据えた機動展開能力の強化
- 複雑化する作戦環境に対応した艦の汎用性向上
- イージス艦に次ぐ“中核艦”としての役割分担
また、新型FFMは次期イージス艦や大型護衛艦の技術基盤となる可能性もあり、「実験艦」「将来技術の試験艦」としての側面も持ちます。
防衛省は2025年度から新型FFMを12隻建造予定で、もがみ型と合計24隻体制となる。
これは日本の護衛艦隊全体の柔軟性と効率性を高めると同時に、将来の艦艇構成の布石ともいえるものです。
「もがみ型」から「新型FFM」への進化は、見た目以上に大きな意味を持っています。単なるサイズアップではなく、任務の多様化・即応性の強化・共同作戦対応力の拡充など、現代戦に求められる要素が詰め込まれています。
2028年以降、海上自衛隊の戦力がどう変化するのか。「新型FFM」の配備に注目していきましょう。