出典 防衛省
そうりゅう型潜水艦(2,900トン/5番艦以降2,950トン)よりも基準排水量が50トン~100トン増加し、3,000トンとなった。
また、そうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」・12番艦「とうりゅう」と同じくAIP(スターリングエンジン)を廃止し、GSユアサ製の大容量リチウムイオン電池を搭載している。
項目 | たいげい型 | そうりゅう型 |
潜航深度 | 運用時650m/最深900m(推定) | 運用時650m/最深900m(推定) |
全長 | 84m | 84m |
全幅 | 9.1m | 9.1m |
高さ(深さ) | 10.4m | 10.3m |
主機関 | ディーゼル電気推進(1軸) | ディーゼルスターリングエンジン電気推進(10番艦まで)/ディーゼル電気推進(11番艦・12番艦) |
軸出力 | 6,000馬力 | 8,000馬力(11番艦・12番艦は5,600馬力) |
基準排水量 | 3,000トン | 2,900トン(5番艦以降2,950トン) |
水中排水量 | 4,300トン | 4,200トン |
水中速度 | 約20ノット(時速37km) | 20ノット(時速37km) |
水上速度 | 13ノット(時速24km) | 13ノット(時速24km) |
乗員 | 約70名 | 65名 |
建造費 | 800億円(当初予算760億円) | 530億円~560億円(11番艦660億円・12番艦690億円) |
兵装 | HU-606 533mm魚雷発射管×6門 | HU-606 533mm魚雷発射管×6門 |
水雷等 | 18式魚雷・89式魚雷・ハープーン(推定合計24本) | 18式魚雷・89式魚雷・ハープーン(推定合計20本) |
航続距離 | 12,000km | 12,000km |
建造数 | 8隻(当ブログ予想) | 12隻 |
最新鋭「たいげい型」潜水艦はAIP(非大気依存推進装置 スターリングエンジン)を廃止し、リチウムイオン電池を搭載する。
このリチウムイオン搭載により連続潜航距離が飛躍的に伸び、従来の「待ち伏せ作戦」から原子力潜水艦のような「巡洋艦作戦」が可能となる。
そこには、防衛省が本気になって尖閣列島を中国軍から防衛し、さらに南シナ海にも展開する意図が感じられる。中国海軍にとっては極めて強力な脅威となる。
- 建造数が8隻と少ない理由は、「たいげい型」は「そうりゅう型」の改良版の意味合いが強く「リチウムイオン電池搭載そうりゅう型2隻+たいげい型8隻」合計10隻は、性能が近く同じように運用するのではないか?
- 「AIP搭載そうりゅう型」も10隻となっている。つまり、海上自衛隊は10隻を「1世代」と考えて運用する構想ではないか?
- 「たいげい型」の出力は6,000馬力で、「そうりゅう型」の8,000馬力よりも低下している。これはスターリングエンジンを廃止したためで、「そうりゅう型11番艦・12番艦」の出力5,600馬力よりも増強している。
- ウォータージェット推進の採用は見送られたが、リム駆動(スクリュー全体を円筒形のダクトで覆う)の可能性はある。もしリム駆動ならば、キャビテーション現象が低減され、騒音や振動がより少なくなる。ただ、重要な推進器を試験艦で実験せずに、実機に採用する可能性は低いと思う。
- 定員が65名から70名に増加しているが、これは女性用区画を増設したためで、実質的には65名で運用できると思われる。
- たいげい型潜水艦のリチウムイオン電池を全固体電池に交換するだけで性能は2倍~3倍になる。また、改修は容易なため2028年頃には試験的に改修するのではないか?
「そうりゅう型」の1番艦~10番艦はAIP(非大気依存推進装置・スターリングエンジン)を搭載している。
しかし、このAIP(スターリングエンジン)では水中速度が時速9kmと遅く、また設置面積(容積)が大きいため、居住スペースを圧迫していた。
そこで新型潜水艦「たいげい型」は大容量リチウムイオン電池を搭載し、水中速度の向上と居住スペースを確保することにした。
将来的には、全固体電池や燃料電池を搭載する可能性もある。
連続潜航距離は極秘なので、個人ブログの単なる予想です。
リチウムイオン電池は鉛電池の4倍の容積エネルギー密度だが、実際に搭載されているのは3倍と予想される。
艦級 | おやしお | そうりゅう(前期)電池のみ | おうりゅう | たいげい |
電池個数 | 240個×2=480基 | 240個×2=480基 | 320個×2=640基 | 340個×2=680基 |
電池種類 | 鉛 | 鉛 | リチウムイオン | リチウムイオン |
総蓄電容量 | 1 | 1 | 1.33×4=4倍 | 1.42×4=4.3倍 |
つまり、総蓄電容量は「おうりゅう」は「おやしお型」の約4倍、たいげい型は約4.3倍と予想される。
艦種 | 電池種類 | 速度 | 潜航持続時間 | 連続潜航航続距離 | |
おやしお型 | 鉛蓄電池 | 4ノット(7km/h) | 100時間 | 700km | |
おやしお型 | 鉛蓄電池 | 16ノット(30km/h) | 6時間 | 188km | |
そうりゅう型(前期型) | 鉛蓄電池 | 4ノット(7km/h) | 100時間 | 700km | 1,600km |
AIP(スターリングエンジン) | 5ノット(9km/h) | 100時間 | 900km | ||
そうりゅう型(おうりゅう・とうりゅう)/ | リチウムイオン電池 | 4ノット(7km/h) | 400時間 | 2,800km | |
8ノット(15km/h) | 100時間 | 1,500km | |||
12ノット(22km/h) | 44時間 | 968km | |||
16ノット(30km/h) | 25時間 | 750km | |||
たいげい型 | リチウムイオン電池 | 4ノット(7km/h) | 430時間 | 3,010km | |
8ノット(15km/h) | 108時間 | 1,620km | |||
12ノット(22km/h) | 48時間 | 1,056km | |||
16ノット(30km/h) | 27時間 | 810km | |||
次期潜水艦 | 全固体電池 | 4ノット(7km/h) | 1,800時間 | 12,600km | |
8ノット(15km/h) | 450時間 | 6,750km | |||
12ノット(22km/h) | 198時間 | 4,356km | |||
16ノット(30km/h) | 111時間 | 3,330km |
沖縄県~南シナ海の距離は約1,800kmなので、往復+αで4,000kmの連続潜航距離が必要とされる。
- そうりゅう型(AIP搭載)は時速9km以下で潜航したまま1,600km航行できる(予想)
- 最新鋭潜水艦「たいげい型」は時速15kmなら潜航したまま1,620km航行できる(予想)
当ブログの試算では、沖縄本島沖から南シナ海には「そうりゅう型(AIP搭載)」なら潜航したままなら9日かかるが、「たいげい型」なら5日で行けることになる。
「たいげい型」がシュノーケル充電しながら航行すれば最速2日~3日で到達できる。
そもそも、潜水艦に搭載する「リチウムイオン電池」は交換可能なので、将来的には「全固体リチウムイオン電池」に交換するだけで、連続潜航距離を飛躍的に伸ばすことができる。
リチウムイオン電池は鉛電池の4倍のエネルギー密度を持つが、全固体電池はリチウムイオン電池の3倍のエネルギー密度と予想される。
実際には、鉛電池を1とするとリチウムイオン電池は3倍、全固体電池は6倍くらいではないか?
したがって、全固体リチウムイオン電池搭載により、連続潜航距離は時速22km(12ノット)で4,400kmになると予想される。
さらに、待ち伏せ攻撃の場合は、連続潜航日数は3ヶ月と予想される。
形式 | 現役艦 | (練習艦) | 全長 | 基準排水量(水中排水量) |
おやしお型 | 9隻 | +(練習艦2隻) | 82m | 2,750トン(3,500トン) |
そうりゅう型 | 12隻 | 84m | 2,9500トン~2,950トン(4,100トン~4,200トン) | |
たいげい型 | 1隻 | 84m | 3,000トン(4,300トン) | |
合計 | 22隻 | +(練習艦2隻) |
2022年3月(2021年度末)に「たいげい型」潜水艦1番艦が就航する予定で、現役艦22隻+練習艦2隻の24隻体制となる。
尖閣列島は東シナ海の大陸棚の末端に位置しており、尖閣列島の北側には水深100m~200mの浅い海が中国大陸まで続く。
潜水艦は水深300mより浅いと敵の哨戒機に発見される可能性が極めて高い。したがって、そうりゅう型潜水艦と言えども、水深300m以下の尖閣列島の北側には展開できない。
一方、尖閣から南側は12km沖で水深500m、15km沖で水深1,000mと急激に深くなっている。
したがって、そうりゅう型潜水艦は水深の深い尖閣列島の南側海域から、尖閣列島の北側に展開する中国艦船を攻撃することになる。
しかし、「そうりゅう型」に搭載する「89式魚雷」は、尖閣列島の北側のような浅い海では、岩礁など障害物を目標と誤認する可能性がある。
そのために、浅い海でも正確に自律誘導できる新型魚雷「18式魚雷(開発名称G-RX6魚雷)」が必要となった。
最新鋭「たいげい型」潜水艦は、尖閣列島で中国軍との決戦を念頭に、水深200m以下の東シナ海に対応する。
1 新型魚雷「18式魚雷(G-RX6魚雷)」
まず、浅い海でも中国艦船を撃沈できる新型魚雷を開発した。それが「18式魚雷(G-RX6魚雷)」で現行の「89式魚雷」の次世代モデルとなる。有線誘導と自立誘導で命中率を向上させる。
敵の囮(おとり・デコイ)装置を回避し敵艦に命中できる。また、地形が複雑な浅海域から深海域まで対応する万能魚雷となる。
平成30年度に実戦配備される予定で、新型潜水艦の就役予定平成33年度には十分に間に合う。
2 次世代音響(ソナー)システム
艦首型アレイ(BOW ARRAY)、えい航型アレイ(TOWED ARRAY)、側面型アレイ(SIDE ARRAY)の各ソナーからの信号を処理し敵艦艇の運動解析を自動的に行い、戦闘指揮のレコメンドを行う高度なシステムを採用する。(SIGNAL PROCESSOR)
3 低騒音性の向上
流体雑音低減型潜水艦船型の研究試作を行っており、大型化する新型潜水艦でも静穏性を維持できる。また浮甲板構造も採用する。
4 新型「たいげい型」の魚雷搭載本数は?
現行の「そうりゅう型」潜水艦には20本の魚雷やハープーンが搭載されていると予想される。通常であれば十分な魚雷本数だ。
しかし、尖閣列島海域で中国艦艇50隻~100隻が尖閣に飽和攻撃を仕掛けてきた場合、魚雷を打ち尽くせば、一旦、佐世保や呉の母港、あるは潜水艦母艦まで戻らないといけない。
新型潜水艦「たいげい型」は船体を大型化(50トン~100トン)しており、魚雷を24本搭載できる可能性がある。
5 VLSは搭載されるか?
尖閣での中国軍との対決の場合、日本の潜水艦は水深1,000mの深い南側に展開、中国軍は北側の水深100m~200mの海域に展開する。
海自が魚雷攻撃する場合、中国軍艦は尖閣列島の影に隠れて攻撃しにくい。
新型潜水艦「たいげい型」にVLS(垂直発射装置)を搭載して、長距離ミサイルを搭載することは技術的には可能である。
しかし、「そうりゅう型」潜水艦でも、魚雷発射管から対艦ミサイル「ハープーン」(射程約280km)を発射できるのでそれで対応するだろう。したがってVLSの搭載は今回は見送りされたと考えられる。
6 リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、潜水艦用主蓄電池(SLH)と呼ばれジーエス・ユアサ テクノロジー製(GYT)が2017年3月から量産を始め、2018年8月に納入すると公表された。
リチウムイオン電池は鉛電池の4倍の電気容量を持つため、同じ容積なら4倍の航続距離となる。(ただし、実際に搭載さえているのは鉛電池の3倍程度ではないか?
さらに、従来のAIP(スターリングエンジン)を廃止しそのスペースにリチウムイオン電池を搭載するため、電気容量は従来型の5倍となるとされる。
7 永久磁石同期モーター
そうりゅう型から搭載された永久磁石同期モーター(PMSM)が引き続き採用される。
従来型モーターの回転子は「コイル(銅線)を巻いていたため、大出力にすると発熱量が大きくなる」という欠点があった。
しかし、コイル(銅線)を永久磁石に置き換えると電気を流す必要がなくなり、発熱量も少なくなり、消費電力も低下するというメリットがある。
また、発熱量が少なくなったことで密閉型モーターとなり、騒音やメンテナンスの点で有利となる。
この永久磁石を回転子に使ったモーターは「永久磁石同期モーター(Permanent Magnet Synchronous Motor:PMSM)」と呼ばれ、世界で初めて東芝が開発した。
ネオジム(レアメタル)、鉄、ホウ素化物で強力な永久磁石を作ることができる。
2006年頃から鉄道車両用モーターに採用されており、エネルギー変換効率が90%以上と従来型の誘導電動機よりも約40%も向上した。
この永久磁石同期モーターは密閉できるので潜水艦の騒音レベルは約10dB程度低減できると予想される。
8 ウォータージェット推進型
スクリューに代わって、ウォータージェット推進型と予想されていたが、従来通りのスクリュー推進となるようだ。
エネルギー効率は、スクリュー型の方が高いため、ウォータージェット推進型は採用されなかったのかもしれない。
しかし、将来的にはウォータージェット推進型を採用する可能性はあると思う。エネルギー効率以外では、ウォータージェット推進型の方が性能が高く、原子力潜水艦と同じ推進形式で高速連続潜航に適しているからだ。
全固体リチウムイオン電池を採用し、蓄電量が増加すると、ウォータージェット推進型を採用するかもしれない。
ただし、原子力潜水艦は時速37kmのまま数年間潜航できるが、通常型潜水艦は全固体リチウムイオン電池を搭載したとしても1日~2日間しか連続潜航できないという大きな違いがある。
しかし、1日~2日間は原子力潜水艦のように運用できるので、潜水艦を多数保有し、交代しながら運用すれば、原子力潜水艦に匹敵する威力を持つことが出来る。
もっとも、作戦半径は1,000km~2,000km以内となるので、作戦海域は日本近海に限られる。
9 ケーブルセンサー網
潜水艦は水中にいる場合、外部と通信ができない。しかし海上自衛隊は日本近海にケーブルセンサー網を張り巡らせ、水中の潜水艦と通信していると言われる。
沖縄県うるま市海上自衛隊沖縄海洋観測所から2本の海底ケーブルが敷設されており、1本は尖閣諸島方面、1本は本土方面に伸びている。
これを利用すれば、E-767、P-3C、P-1、E-2Cが敵艦艇の位置を捕捉し、水中の潜水艦とデータリンクすることで、そうりゅう型潜水艦から、対艦ミサイル「ハープーン」を発射できる。
この場合、そうりゅう型潜水艦は、アクティブソナーなどを発することなく、敵艦艇の位置を把握し、魚雷やハープーンを発射できる。
中国艦艇が日本近海に接近すると自衛隊が中国艦船の位置を把握し、ケーブルセンサー網を通じて、24時間体制で警戒監視をしている「そうりゅう型」潜水艦と交信し、いつでも中国艦艇を撃沈できる状態になる。
しかし、潜水艦の魚雷搭載本数は1隻当たり20発と予想されるので、2隻で40発、3隻で60発しかない。
中国艦艇が100隻以上で飽和攻撃を仕掛けてきた場合、現状の潜水艦数では魚雷が不足する。
海自潜水艦22隻体制になれば、尖閣諸島には潜水艦部隊2個隊(潜水艦4隻~6隻)が割り当てられると予想される。
しかし、潜水艦を運用するには年間数か月の補修期間が必要なので、実際に常時配備できるのは3隻~4隻にとどまる。
やはり日本列島を防衛するには潜水艦40隻は必要と思われる。
現行「そうりゅう型」でも中国軍に十分勝てるが、新型潜水艦「たいげい型」は、尖閣列島北側水域の浅海域(水深100m~200m)でも能力を発揮できるよう開発されている。
さらに、そうりゅう型から採用されている密閉型の永久磁石同期モーター(PMSM)搭載により、静粛性が高く、敵に発見されにくい。
次世代音響(ソナー)システムの採用により、敵探知を自動化し、敵潜水艦の探知能力が高まる。