12式地対艦誘導弾(SSM)
防衛省は、12式地対艦誘導弾(SSM)を改良し、敵ミサイルの射程圏外から攻撃できる長射程巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)を2020年代後半にも配備する。
現在の射程200kmから1,000km超まで長射程化する計画。
新型12式地対艦誘導弾(SSM)は、12式地対艦誘導弾(SSM)に主翼を付加し大型化し、地上、艦艇、航空機(F-2戦闘機)からも発射でき、敵の地上目標も攻撃できるようになる。
さらに、2020年代後半には潜水艦から水中発射できるよう検討している。発射方式は魚雷発射管またはVLS(垂直発射装置)を検討中。
- 2025年 地上発射型の実用化試験
- 2026年 艦船搭載型の実用化試験
- 2028年 航空機(F-2戦闘機)搭載型の実用化試験
- 2020年代後半 潜水艦発射型(魚雷発射管またはVLS)
自衛隊の誘導弾の概要
型式 | 射程 | 直径 | 全長 | 重量 | 製造 | 配備時期 |
88式地対艦誘導弾(SSM) | 150km | 35cm | 500cm | 660kg | 三菱重工業 | 1988年 |
12式地対艦誘導弾(SSM) | 200km | 35cm | 500cm | 700kg | 三菱重工業 | 2012年 |
12式地対艦誘導弾(SSM)改 | 400km | 35cm | 500cm | 三菱重工業 | 2023年(計画中止か?) | |
新型12式地対艦誘導弾(SSM) | 1000km超 | 三菱重工業 | 2020年代後半 | |||
新型対艦誘導弾 | 2,000km | 川崎重工業 | ||||
極超音速誘導弾 |
新型12式地対艦誘導弾(SSM)の性能予想
- 中国はロシア製の射程400kmの地対空ミサイル「S-400」(トリウームフ)を2019年頃に配備したと見られる。この「S-400」のレーダー探知距離は700kmであるため、新型長距離巡航ミサイルの射程は1000km以上と予想される。
- 現在、防衛省は「12式地対艦誘導弾(SSM)」の射程200kmを400kmに長射程化する「12式地対艦誘導弾(SSM)改」を2023年配備を目標に開発していた。しかし、射程400kmでは中国のミサイルよりも性能が劣り時代遅れであることから、計画を変更し長射程化したものと思われる。
自衛隊が導入開発予定の長距離誘導弾(まとめ)
ミサイル | 内容 | 射程 | 導入時期 | 発射方法など |
新型12式地対艦誘導弾(SSM) | 地対艦/空対艦/艦対艦/巡航誘導弾 | 1000km超 | 2020年代後半 | 陸上・海上・航空機発射型 |
新型対艦誘導弾 | 2,000km | |||
JSM | 空対地巡航誘導弾 | 500km以上 | 2022年3月 | ステルス戦闘機F-35A |
JASSM-ER | 空対地巡航誘導弾 | 926km以上 | F-15J(要改修)・F-35A(ウエポンベイ外部) | |
LRAZM | 艦対艦巡航誘導弾 | 800km以上 | ハープーン後継・護衛艦垂直発射(VSL)・潜水艦(魚雷発射管) |
12式地対艦誘導弾(SSM)改計画を変更か?
防衛省は、現在の「12式地対艦誘導弾(SSM)」の射程200kmを400kmに長射程化した「新型ミサイル(地対艦誘導弾)改」を2023年にも部隊配備する計画だったが、今回の長距離誘導弾に変更された可能性が高い。
変更前の概要
12式地対艦誘導弾(SSM)改を宮古島に配備すると、尖閣列島までの距離は約170km~約180kmなので、尖閣列島の北方約200kmまでが射程に入る。さらに中国海軍が頻繁に航行している宮古海峡(宮古島~那覇間290km)の全海域を射程に収めることができる。
問題点
ただ、88式地対艦誘導弾、12式地対艦誘導弾の速度は時速1,200kmで、もし、新型長距離巡航ミサイルも同じならば、300km先の目標に到達するのに15分かかる。軍艦の最大速度は時速50kmなので15分で約12km移動できる。
このため、本来なら誘導弾の速度を上げる必要があるが、防衛省は2026年配備を目標にマッハ5以上の対艦ミサイル(ASM-3改)を別途開発しているので、新型長距離巡航ミサイルは速度を上げるのではなく、むしろ1000km以上という長射程を開発目標にすると思われる。
したがって、新型長距離巡航ミサイルの推進装置については12式地対艦誘導弾と同じ固体燃料ロケット+ターボジェットという組み合わせのままと思われる。誘導方式については、新型ミサイルはGPS誘導で敵艦船まで接近し、最終誘導は自らレーダーを発射して敵艦を探知するアクティブ・レーダー・ホーミング式となるが、海自のP1哨戒機・E-767早期警戒管制機から位置情報を取得して誘導する「戦術データ交換システム(データリンク)」も併用すると思われる。
射程の延長については燃料を多く搭載すればよく、誘導装置についても、GPS誘導とアクティブ・レーダー・ホーミング式誘導はすでに12式地対艦誘導弾に採用されており技術的な問題はない。しかし、誘導装置の高度化(データリンク)については開発に時間がかかると思われる。
ただ、88式地対艦誘導弾、12式地対艦誘導弾の速度は時速1,200kmで、もし、新型長距離巡航ミサイルも同じならば、300km先の目標に到達するのに15分かかる。軍艦の最大速度は時速50kmなので15分で約12km移動できる。
このため、本来なら誘導弾の速度を上げる必要があるが、防衛省は2026年配備を目標にマッハ5以上の対艦ミサイル(ASM-3改)を別途開発しているので、新型長距離巡航ミサイルは速度を上げるのではなく、むしろ1000km以上という長射程を開発目標にすると思われる。
したがって、新型長距離巡航ミサイルの推進装置については12式地対艦誘導弾と同じ固体燃料ロケット+ターボジェットという組み合わせのままと思われる。誘導方式については、新型ミサイルはGPS誘導で敵艦船まで接近し、最終誘導は自らレーダーを発射して敵艦を探知するアクティブ・レーダー・ホーミング式となるが、海自のP1哨戒機・E-767早期警戒管制機から位置情報を取得して誘導する「戦術データ交換システム(データリンク)」も併用すると思われる。
射程の延長については燃料を多く搭載すればよく、誘導装置についても、GPS誘導とアクティブ・レーダー・ホーミング式誘導はすでに12式地対艦誘導弾に採用されており技術的な問題はない。しかし、誘導装置の高度化(データリンク)については開発に時間がかかると思われる。
空対艦ミサイル
新型長距離巡航ミサイルは海上自衛隊のP-1哨戒機にも搭載し「空対艦ミサイル」としても活用する。陸上(島)発射の場合、レーダーでは水平線以遠を航行する艦艇を捕捉できないのでP-1哨戒機でレーダー捕捉するしかないし、300km先の目標に到達するまで15分かかる。ならば、P-1哨戒機にもに空対艦ミサイルを搭載した方が即応迎撃できるという発想かもしれない。
新型長距離巡航ミサイルは海上自衛隊のP-1哨戒機にも搭載し「空対艦ミサイル」としても活用する。陸上(島)発射の場合、レーダーでは水平線以遠を航行する艦艇を捕捉できないのでP-1哨戒機でレーダー捕捉するしかないし、300km先の目標に到達するまで15分かかる。ならば、P-1哨戒機にもに空対艦ミサイルを搭載した方が即応迎撃できるという発想かもしれない。
現在の地対艦ミサイル
陸上自衛隊の地対艦ミサイルは「12式地対艦誘導弾」(射程200km)と「88式地対艦誘導弾」(射程150km)で、共にトラック(発射車両)に搭載でき、有事の際は移動できる。「88式地対艦誘導弾」は沖縄方面を管轄とする西部方面隊第5地対艦ミサイル連隊(熊本)に配備されている。「12式地対艦誘導弾」16車両(ミサイル96本)も2016年度から西部方面隊(熊本)に配備されており、有事の際は沖縄県の離島にミサイル発射車両を運搬すると見られる。
陸上自衛隊の地対艦ミサイルは「12式地対艦誘導弾」(射程200km)と「88式地対艦誘導弾」(射程150km)で、共にトラック(発射車両)に搭載でき、有事の際は移動できる。「88式地対艦誘導弾」は沖縄方面を管轄とする西部方面隊第5地対艦ミサイル連隊(熊本)に配備されている。「12式地対艦誘導弾」16車両(ミサイル96本)も2016年度から西部方面隊(熊本)に配備されており、有事の際は沖縄県の離島にミサイル発射車両を運搬すると見られる。
現在の尖閣周辺の状況
尖閣列島から石垣島は170km、宮古島までは180kmの距離がある。尖閣列島から中国大陸までの最短距離は約330kmで、尖閣列島の北方約100km~150kmに中国海軍の艦船が常時待機している。自衛隊の護衛艦と潜水艦は尖閣列島の南側約50km~100kmに展開している。つまり尖閣列島を挟んで自衛隊護衛艦、潜水艦と中国軍艦が常に対峙しているのだ。中国軍艦艇が待機している海域は水深150m~200mと浅い。海上自衛隊の「そうりゅう型潜水艦」は水深650m~900mまで潜航できるが、水深150m~200mの海域では発見される可能性があり、中国軍艦に容易には接近できない。また、「12式地対艦誘導弾」の射程は最大200kmなので、石垣島、宮古島から尖閣の領海(島から約22km)を防衛できるが、現在、中国軍艦が待機してる尖閣列島の北側海域には到達できない。
尖閣列島から石垣島は170km、宮古島までは180kmの距離がある。尖閣列島から中国大陸までの最短距離は約330kmで、尖閣列島の北方約100km~150kmに中国海軍の艦船が常時待機している。自衛隊の護衛艦と潜水艦は尖閣列島の南側約50km~100kmに展開している。つまり尖閣列島を挟んで自衛隊護衛艦、潜水艦と中国軍艦が常に対峙しているのだ。中国軍艦艇が待機している海域は水深150m~200mと浅い。海上自衛隊の「そうりゅう型潜水艦」は水深650m~900mまで潜航できるが、水深150m~200mの海域では発見される可能性があり、中国軍艦に容易には接近できない。また、「12式地対艦誘導弾」の射程は最大200kmなので、石垣島、宮古島から尖閣の領海(島から約22km)を防衛できるが、現在、中国軍艦が待機してる尖閣列島の北側海域には到達できない。
中国「S-400」配備
中国はロシアから射程400kmの地対空ミサイル「S-400」(トリウームフ)を輸入する契約を2015年に締結し、2019年までに中国に配備したと思われる。「S-400」のレーダーは700km以内の300の目標を捕捉し、射程400km以内の6つの目標を同時に迎撃できるとされる。S-400の価格は1セット5億ドル(約600億円)で、中国は合計6セット30億ドル(3,300億円)分を購入し配備すると予想される。中国大陸から尖閣列島までは約330kmなので、中国軍のミサイルの射程が400kmなら、尖閣列島の南側70kmの空域まで中国のミサイル射程圏となっており、有事の際は空自のF-15Jも容易に尖閣列島に接近できなくなっている。
中国はロシアから射程400kmの地対空ミサイル「S-400」(トリウームフ)を輸入する契約を2015年に締結し、2019年までに中国に配備したと思われる。「S-400」のレーダーは700km以内の300の目標を捕捉し、射程400km以内の6つの目標を同時に迎撃できるとされる。S-400の価格は1セット5億ドル(約600億円)で、中国は合計6セット30億ドル(3,300億円)分を購入し配備すると予想される。中国大陸から尖閣列島までは約330kmなので、中国軍のミサイルの射程が400kmなら、尖閣列島の南側70kmの空域まで中国のミサイル射程圏となっており、有事の際は空自のF-15Jも容易に尖閣列島に接近できなくなっている。
アメリカ軍も注目
アメリカ軍は圧倒的な軍事力を保有しており、アメリカ本土や島嶼などの陸上配備型の「地対艦ミサイル」を保有していない。そこで長年、地対艦ミサイルの開発・配備を行ってた日本の陸上自衛隊の装備に注目している。
アメリカ軍は圧倒的な軍事力を保有しており、アメリカ本土や島嶼などの陸上配備型の「地対艦ミサイル」を保有していない。そこで長年、地対艦ミサイルの開発・配備を行ってた日本の陸上自衛隊の装備に注目している。