新規上場スケジュール
JR九州(九州旅客鉄道株式会社)が2016年10月25日(火)に上場する。JR九州の株式はすべて政府系独立行政法人(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が保有しており、時価総額約4,000億円の大型上場となる。
目論見書によると、売出株式は1億2,000万株で、売り出し価格2,600円で計算すると、売出総額は3,120億円となる。
新規上場(IPO)スケジュール | |
ブックビルディング(抽選申込) | 2016年10月7日~14日(金)11:00 |
売出価格決定 | 10月17日(月) |
購入期間 | 10月18日~21日(金)11:00 |
上場 | 10月25日(火) |
最小購入単位 | 100株 |
売出価格 | 2,600円 |
最小購入金額(売出価格から計算) | 26万円 |
売出価格、初値は?
2016年10月17日に売出価格は2,600円に決定した。上場初値は、売出価格2,600円の+5%で2,730円、+10%で2,860円となる。
JR九州の鉄道部門は実質赤字で、駅ビルなどの不動産業、ホテルなどの関連事業で利益を出す経営状態のため、短期間で株価が2倍~3倍になるとは思えない。
しかし、地元の九州では個人投資家の買い需要は強い。株主優待券目的の買いも期待できるので、底固く推移すると思われる。
初値は、売出価格+10%~+15%は十分に可能性はある。ただ、株価が3,000円ならPER12.6倍で、JR東のPER13倍、JR西のPER11.5倍と同水準になり、3,000円以上は高値警戒感がでる可能性がある。
したがって初値は2,800円~3,000円程度との見方が多い。
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JR九州の鉄道事業は赤字
JR九州の平成28年3月決算では、鉄道事業は約110億円の赤字だった。不動産、外食、ホテル事業などの黒字や経営安定化基金の運用益で鉄道事業の赤字を補填し、全体で54億円の黒字になっている。
経営安定化基金3,877億円は国鉄民営化の際、JR九州の鉄道事業は赤字が見込まれたため配分された資金。
上場前に、この基金を使って、約5,200億円を減損処理した。また、九州新幹線の線路設備は鉄道運輸・運輸施設整備支援機構が保有し、JR九州が借りる形になっており、その借料を前払いした。
したがって、経営安定化基金3,877億円は上場時点ではないと考えられる。
鉄道事業が赤字体質という点でJR東海などのJR3社と収益構造が根本的に違う。
九州の個人投資家に人気が高い
時価総額は他のJR3社と比較すると小さく、本業の鉄道事業が赤字体質で業績はよくない。機関投資家が積極的に買う銘柄ではない。
しかし、地元九州の個人投資家の買い需要は高く、需給は底堅い。
JR九州も個人株主を重視する姿勢で、配当性向を30%とする。ただし、2017年3月は上場後約半年なので配当性向15%の予定。
また、株主優待も充実しており、株主優待券1枚で運賃(乗車券)または、料金(特急券、グリーン券、指定席券)が50%引きで乗れる。
JR九州のHPには、
JR3社との比較
JR九州は2016年9月15日に平成29年3月の業績予想を発表した。
売上(営業収益) | 3,788億円 |
営業利益 | 518億円 |
純利益 | 382億円 |
1株当たり純利益 | 238円75銭 |
配当金(1株当たり) | 37円50銭 |
これで計算するとJR九州の予想PERは株価2,450円で10.26倍となる。これはJR東海9.45倍、JR東13.32倍、JR西11.50倍(2016年9月)と比較すると割安感がある。
JR九州のPERと予想株価
PER13倍 | 3,104円 |
PER12倍 | 2,865円 |
PER11倍 | 2,626円 |
PER10倍 | 2,388円 |
まとめ
JR九州の鉄道事業の業績はよくないが、地元の人気が高く、個人株主の買い需要は高い。したがって、株式公開、初値は順調に値がつくと思われる。しかし、その後は株価に業績が付いてこない可能性もある。そうなると、上場後、数か月で株価が下落する可能性もある。