2016年8月21日、共同新聞によると、中国の程永華駐日大使が2016年6月下旬、南シナ海で米軍が実施する「航行の自由」作戦に自衛隊が派遣されれば、「中国の譲れぬ一線を日本が越えることになる」と絶対に容認できない旨、日本政府高官に伝えたという。
中国が自衛隊の自由航行を認めない理由
結論から言うと中国海軍が弱いからだ。もし、中国海軍が自衛隊や米軍より強いなら、米軍や自衛隊が南シナ海に入ってきても、中国軍は軍艦を派遣すればいいだけだ。
例え、軍事的衝突があっても中国軍が強いなら勝てるのだから何の問題もない。むしろ、自衛隊に南シナ海に来て欲しいくらいだ。
中国の程永華駐日大使の発言は、「中国軍は米軍や自衛隊より弱いから、南シナ海に来ないでくれ」という趣旨で、自ら中国軍が弱いことを日本政府に伝えてきたのだ。
中国にとって南シナ海とは?
中国は南シナ海にSSBN(SLBM搭載載潜水艦)を展開し、対米抑止力の中核にする意向だ。
現在、中国のSLBM(潜水艦発射ミサイル)の射程は8,000kmしかないが、将来的には射程を12,000kmまで伸ばし米国本土に届くようにする計画だ。
地上の核ミサイルは、敵の先制攻撃で80~90%は破壊されるとさる。抑止力としては不十分だ。
しかし、水深300m以上に潜む潜水艦は敵のICBM(大陸間弾道ミサイル)でも破壊されず、生存率は極めて高い。
実際、中国は海南島の三亜市に亜竜湾原子力潜水艦基地を建設し、すでに094型戦略ミサイル原子力潜水艦(普級 全長137m 12,000t)が3隻配備されている。
付近には榆林潜水艦基地があり、キロ級潜水艦が4隻、039A型潜水艦が4隻配備されている。
現在、中国は69隻の潜水艦を保有し2020年までに100隻まで増強する予定だ。
中国が「そうりゅう型潜水艦」を嫌がる理由
日本のそうりゅう型潜水艦は、水深700m~900mまで潜航できるが、中国海軍は水深300mまでしか潜水艦を探知できない。
つまり、日本の「そうりゅう型」潜水艦は中国海軍から発見されることなく、一方的に中国軍艦、潜水艦を撃沈できるのだ。
特に南シナ海は、水深3,000~4,000mで、日本のそうりゅう型潜水艦がその能力を100%発揮できる海域だ。
例えば、5隻の「そうりゅう型」を南シナ海(公海)に展開すれば、1隻当たり22発の89式魚雷合計110発を発射できる。
これにより、中国の軍艦・潜水艦を2時間以内に80~90隻撃沈できる。
今後の見通し
中国のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)の射程は現在8,000kmだが、将来的に12,000kmまで延長する計画だ。そうなれば、米国本土が中国の核ミサイルの射程内に入って来る。
米軍としては絶対に容認できないことだ。今後、南シナ海において中国軍と米軍との軍事的緊張は高まる。そして、自衛隊の護衛艦、潜水艦も南シナ海に展開する可能性は高い。
特に、日本の「そうりゅう型潜水艦」は中国軍に一度も探知されていない。すでに「そうりゅう型」潜水艦が南シナ海に入っていて、中国のミサイル原潜(SSBN)を監視しているかもしれない。もし、そうであっても中国軍は、日本の潜水艦を探知できない。
まとめ
南シナ海に自衛隊が入れば、中国の核抑止力は無力化される可能性がある。それで、中国大使が「自衛隊の南シナ海での航行の自由作戦参加」を絶対に認めないと言ったのだ。
日本の自衛隊の潜水艦は2023年までに22隻(実戦配備)+2隻(練習艦)=24隻体制にする。
長らく潜水艦は16隻体制であった。つまり、日本沿岸は16隻で防衛できるのだ。24隻体制になれば8隻は南シナ海、尖閣に常駐できる。
しかし、実際には修理期間が必要なので、尖閣に5隻、南シナ海に5隻を常駐させるには、予備艦を含めそれぞれ7隻ずつの合計14隻が必要となる。
つまり、日本沿岸防衛用に16隻+尖閣7隻+南シナ海7隻の合計30隻が必要となる。
潜水艦の対応年数は30~40年だ。したがって、30年間現役で使用すれば、2030年頃には現状の1年に1隻の建造ペースなら30隻体制となる。