安倍首相とトランプ次期大統領は2016年11月17日に米ニューヨーク(NY)で会談する。トランプ大統領は、在日米軍撤退の方針であり、安倍首相はこれを説得して撤回させる方針だ。
しかし、従来通りの「在日米軍駐留はアメリカの国益になる」と言うだけでは、トランプ大統領を説得できない。
トランプ大統領は、いい意味でも悪い意味でも「ビジネスマン」だ。トランプ大統領は大統領選挙戦をビジネス的手法で勝利した。彼にとって、アメリカ国民は顧客である。ビジネスの基本として、顧客をセグメント分け(セグメンテーション)して、特定の顧客に向けてマーケティングを行う。
今回の大統領選挙では、トランプ大統領は、「白人中間層、低所得者層をメイン顧客層」とし集中的にマーケティングをして彼らの票を得た。
トランプ大統領の政策は、ビジネス的に解釈すれば、わかりやすい。
彼の言う「米国第一主義」とは、「顧客であるアメリカ国民第一主義」なのだ。つまり、ビジネスマンの言う「顧客第一主義」と同じだ。
トランプ大統領を説得するには、「アメリカの国益」をいくら唱えても響かない。トランプ大統領の顧客である「アメリカ国民」にとってどんなメリットがあるかを具体的にアピールする必要がある。
「在日米軍駐留はアメリカの国益になる」では、アメリカ国民にとってどんなメリットがあるのが具体的にわからない。
「アメリカの国益」とは具体的になにか?
・日本からアメリカに5万ドルのレクサス(高級車)を輸出する場合、日本人はアメリカ人にレクサス車を渡し、アメリカ人は日本人に単なる紙(ドル紙幣)を渡している。
言い換えれば、アメリカ人は単なる紙(ドル紙幣)で日本から高級車を買えるのだ。
「これがアメリカの国益であり、それができるのは、アメリカ軍が世界中に展開しているためであり、在日米軍もそのアメリカの国益を支えている。」
日本はアメリカの国益に従ったビジネス(ドル建て貿易)を行っている。しかし、中国は中国人民元建て貿易を拡大することで、アメリカの国益を侵しつつある。
在日米軍が撤退すれば、20億人のアジア市場は、中国経済圏となる可能性がある。そうなると、アジア圏では、中国人民元が主流となり、中国は紙(中国人民元)でアジアから資源や工業製品を買うことができるようになる。
一方、アメリカ人が紙(ドル紙幣)でアジアから工場製品を買うことが徐々に難しくなる。場合によっては、アメリカドルを中国人民元に交換して、資源や工業製品を買うことになる。
つまり、在日米軍撤退でアメリカは紙で世界中から資源や工業製品を買えるという国益を失う可能性がある。
トランプ大統領は富裕層ばかりが豊かになるアメリカの仕組みを変えるゲームチェンジャーだ。
しかし、彼はビジネスマンであるために、ビジネス感覚で国家を経営しようとしている。それが彼の弱点だ。
企業であれば「借金は返済しないといけない」。しかし、国家であれば、借金を返済しなくてもいいのだ。
例えば、アメリカという国家が他国に1兆ドルの借金をした場合、アメリカはドル紙幣で返済すればいいのだ。アメリカという国家はドル紙幣をいくらでも発行できる。それだけ通貨供給量を増大させればアメリカ国内的にはインフレになるが、対外的には1兆ドルの借金だから、1兆ドルの紙幣を発行してそれで返済すればいい。
ゲームチェンジャーであるトランプ大統領を説得するには、安倍首相もゲームチェンジャーでなければならない。
つまり、安倍首相もアメリカ政府だけを交渉相手にするのではなく、アメリカ国民を顧客と考え、アメリカ国民にメリットのある対米交渉をしなければならない。
これがトランプ時代の対米交渉戦略だ。