現時点での主要な見解(2025年時点)
1. 軍事侵攻の可能性はゼロではないが、低いという見方が主流
アメリカのシンクタンク(CSISやRANDなど)や日本の防衛研究所の多くは、2027年までに「限定的な衝突」や「封鎖」などの「灰色領域」行動**の可能性を警戒しています。
本格的な上陸作戦(全面侵攻)はリスクが大きすぎ、中国にとって得るものより失うものが多いという分析が多いです。
2. 2027年は節目の年
中国人民解放軍建軍100周年にあたるため、習近平政権が軍の近代化完成をアピールするタイミング。
そのため、軍事的圧力が高まる可能性はあるが、それが「全面侵攻」になるかは不透明。
3. 中国国内の経済・社会情勢次第
経済の失速や若年層の不満など、国内の不安定要因が「外への敵を作る」動機になる可能性も指摘されています。
一方で、不確実性の高い戦争によって政権が崩壊するリスクもあるため、慎重な外交・サイバー・経済圧力にとどめる可能性も高い。
4. アメリカ・日本・台湾の備え次第
アメリカの台湾防衛コミットメント(いわゆる「戦略的曖昧さ」)がどう動くか。
日本が与那国・石垣・宮古島など南西諸島の防衛体制を強化中で、日米台の連携が中国の抑止力になる可能性も。
軍事的段階 | 中国の行動例 | 各国の対応戦略 |
---|---|---|
第1段階(威圧) | – 軍機によるADIZ侵入
– サイバー攻撃 |
米国:外交的非難、情報収集
日本:警戒監視強化 台湾:防空体制強化 |
第2段階(封鎖) | – 港湾・空港の封鎖
– 通信・物流の遮断 |
米国:空母打撃群の展開
日本:自衛隊の警戒態勢強化 台湾:備蓄放出、国民動員準備 |
第3段階(離島占拠) | – 金門・馬祖など離島の占拠
– 上陸演習の実施 |
米国:兵站支援、武器供与
日本:邦人退避支援、後方支援 台湾:局地防衛、国際支援要請 |
第4段階(全面戦争) | – 本島侵攻(ミサイル攻撃・上陸作戦)
– 空挺部隊の投入 |
米国:直接軍事介入の可能性
日本:集団的自衛権の行使検討 台湾:全面動員、市街戦準備 |
観点 現実的な評価(2025年時点)
全面侵攻の可能性 | 低いがゼロではない(5~10%程度という推定も) |
---|---|
圧力や限定的衝突 | 中~高(30~50%と見る専門家も) |
情勢の鍵を握るもの 中国国内情勢、アメリカの対応、日本の抑止力、台湾の内部団結
【シナリオ1】グレーゾーン作戦の強化(非武力的圧力)
中国が武力を使わず、軍事的恫喝や情報・経済的圧力で台湾を揺さぶる。
要素 | 内容 |
---|---|
軍事 | 毎日のようにADIZ(防空識別圏)への進入。ドローンや無人艇の派遣。 |
サイバー攻撃 | 台湾の電力網、通信、金融システムへの断続的な攻撃。 |
経済 | 観光・農産物の禁輸、台商への圧力。 |
情報戦 | SNSなどを使った世論分断・偽情報拡散。 |
目的:戦わずして屈服させる(孫子の兵法)
リスク:低(国際的な戦争には発展しにくい)
【シナリオ2】海空封鎖シナリオ
中国が台湾への航空・海上交通を遮断。実際の上陸はしないが、事実上の「兵糧攻め」。
要素 | 内容 |
---|---|
軍事 | 台湾周辺を中国海軍と空軍が囲む。港湾封鎖。 |
経済 | 台湾の輸出入(特に半導体)がストップ。世界経済にも影響。 |
国際対応 | 米国・日本が物資支援を試みる→軍事的緊張が高まる。 |
目的:軍事侵攻せず台湾を屈服させる中間戦略
リスク:中(アメリカとの衝突リスクが高まる)
【シナリオ3】金門・馬祖など離島の限定侵攻
台湾本島には攻撃せず、福建省に近い小島(金門島・馬祖列島など)を占領し、台湾側の「譲歩」を引き出す。
要素 | 内容 |
---|---|
作戦規模 | 数日で奪取可能な規模。人民解放軍が即応展開。 |
国際反応 | 本格的な制裁の引き金にはなりにくい。だが米国は支援強化。 |
台湾の反応 | 国内の対中感情が高まり、民進党支持が上昇。 |
目的:低リスクで軍事的既成事実を作る
リスク:中(武力衝突には発展しにくいが、政治的反発は強い)
【シナリオ4】全面侵攻シナリオ(上陸作戦)
中国が台湾本島を武力で制圧し、政権転覆・統一を狙う最大規模の作戦。
フェーズ | 内容 |
---|---|
① 開戦直前 | 大規模なサイバー攻撃とデマ拡散、通信遮断、空港・港湾封鎖。 |
② 開戦初日 | 弾道ミサイル攻撃(台北、嘉義、台中、高雄)、空爆開始。 |
③ 数日後 | 人民解放軍が艦艇・上陸用舟艇で海峡横断、本島上陸。 |
④ 市街戦 | 台北などでゲリラ戦。死傷者多数。長期戦化のリスクあり。 |
想定される死傷者:両国合わせて10万人単位(CSIS予測)
日米が介入すれば全面戦争に発展
習近平にとっても「賭け」であり、政権崩壊リスクも伴う
各国の対応シナリオ
国・地域 | 想定対応 |
---|---|
🇺🇸 アメリカ | 早期警戒。空母打撃群と空軍を展開。台湾支援だが全面介入には慎重。 |
🇯🇵 日本 | 与那国・石垣・沖縄で防衛体制強化。中国の動き次第で後方支援か防衛出動。 |
🇹🇼 台湾 | 一部で徴兵制延長中。ドローン戦・市街戦を想定した新戦略採用。 |
🇪🇺 欧州 | 経済制裁は協調。軍事介入は消極的。 |
🇦🇺 オーストラリア | クアッド(日米豪印)枠組みで海上監視に協力の可能性。 |
結論:最もあり得るのは?
シナリオ | 可能性(2025時点の専門家評価) |
---|---|
グレーゾーン強化 | ★★★★★(高) |
海空封鎖 | ★★★★☆(中~高) |
離島限定侵攻 | ★★★☆☆(中) |
全面侵攻 | ★★☆☆☆(低だが無視できない) |
中国共産党政治局常務委員
中国共産党中央委員会第1回総会(1中総会)で党最高指導部人事(第20期 任期5年)が2022年10月23日に決定した。
新たな最高指導部に習近平総書記、李強氏、趙楽際氏、王滬寧氏、蔡奇氏、丁薛祥氏、李希氏の計7人を選出した。
今回の「チャイナ・セブン」は、序列7位の李希氏以外は、すべて習近平派となり、7位の李希氏も習近平氏に反対はしないと見られる。
これにより、胡錦涛派、江沢民派は権力を失い、習近平主席の独裁体制が確立した。
このことから、次の4期目(2027年~2032年)も、習近平氏が主席となる道筋が見える人事となった。
以前は、習近平主席の3期目の任期が終わる2027年までに、中国が台湾に侵攻する可能性があるとされた。
しかし、習近平主席は4期目の任期の期限2032年まで最高指導者の地位を維持すると見られるので、あえて、2027年までに台湾に侵攻する必要はなくなったと言える。
「攻撃3倍の法則」というものがある。攻撃側は守備隊の3倍の兵力が必要とするドイツ陸軍の考え。
この法則によると、中国軍が台湾全土を占領するには、陸上兵力30万人~50万人を台湾に1週間で上陸させる必要があると思う。
そのためには、一隻当たり1,000人収容できる大型の強襲揚陸艦が20隻~30隻は必要だ。
しかし、2024年時点で中国軍の075型強襲揚陸艦(1,600人収容)は3隻しかなく、計画中も含めても8隻しかない。
また、071型揚陸艦(最大800人収容)も8隻しかなく、計画中を含め16隻で約2万人しか収容できない。
- 075型強襲揚陸艦(1,600人収容):3隻(計画を含め8隻・合計12800人)
- 071型揚陸艦(最大800人収容) :8隻(計画を含め16隻・合計12800人)
2027年までに、計画通り配備され、すべての艦船が敵に攻撃されず1日2往復をして1週間で約18万人を上陸させられる。
台湾侵攻の軍備としては十分ではないが、数字上は台湾侵攻できる。
より完璧に台湾侵攻の軍備を整えるのであれば、習近平4期目の任期の期限である2033年までかかると思う。
しかし、国際情勢によっては、習近平が2027年に台湾侵攻を命じる可能性はる。
2027年~2033年に中国が台湾に侵攻する可能性が最も高い。
- 期間 1945年3月26日~1945年6月23日
- 日本軍兵力 116,400人(うち陸軍約5万人、海軍3千人、後方部隊2万人、沖縄現地招集3万人)
- 米軍兵力 548,000人(う上陸兵力278,800人)
日本軍の兵力は実質、陸軍5万人+3万人=8万人と言える。これに対して、米軍の上陸兵力は278,800人で日本軍の約3倍と言える。
台湾陸軍の兵力は10万人だが、予備役を含めると実質15万人~20万人の兵力なので、中国軍はその3倍の45万人~60万人の陸上部隊を台湾に上陸させる必要がある。
中国軍が台湾に侵攻するならば、事前に1,000発以上のミサイルで台湾を攻撃すると予想され、その時点でアメリカ軍の原子力潜水艦は台湾海峡付近に展開すると予想される。
しかし、中国の対潜能力は低く、アメリカ軍の原子力潜水艦を発見できない。
中国軍の装備から考えて、強襲揚陸艦による台湾上陸作戦はそう簡単ではない。
結論から言うと、中国軍が台湾に上陸するのはかなり難しい作戦なので、2027年までにはできない。
そのため、心理戦に持ち込んで、軍事力を行使せず、台湾が中国に併合されるように仕向けているのだと思う。
この心理戦が失敗すれば、2032年までに、軍事侵攻の可能性が高くなる。
2022年8月4日からの中国軍は台湾を取り囲むように軍事演習を行った。これは台湾の海上封鎖を想定したものと思われる。
しかし、中国軍が台湾を海上封鎖しても、アメリカは無人輸送機や無人貨物船で台湾に物資を補給する可能性もある。
そして、中国軍がアメリカの無人輸送機や無人貨物船を攻撃すれば、アメリカ軍と中国軍の戦争に発展するだろう。
そうなると、アメリカ軍の原子力潜水艦により、中国海軍は1週間で壊滅する。
台湾を海上封鎖することは、アメリカとの戦争に発展する可能性があり、中国としても安易には実施できない。
中国が台湾侵攻する場合、米軍と戦争になる可能性がある。
もし、中国が米軍と戦うなら、米軍よりも先に尖閣に上陸しミサイル部隊を配備し戦局を有利にするだろう。
具体的には、中国軍がロシア製S-400地対空ミサイルを尖閣列島(例えば平坦な久場島)に配備すると、射程400kmなので沖縄本島の自衛隊基地や在日米軍基地までも射程圏内に入る。
もちろん、400kmも離れると低空ではレーダー探知できないが、上空に上がれば沖縄本島付近の自衛隊や米軍の航空機を撃墜できる。
逆に、米軍が尖閣にミサイル部隊を展開すれば、中国の台湾侵攻には圧倒的に不利になる。
したがって、もし、中国が台湾侵攻するなら、尖閣も同時に侵攻する可能性がある。
自称専門家達は「武装漁民が尖閣に上陸する」というシナリオを考えているが、それは間違いだ。
確かに、中国はフィリピン領の島に武装漁民を上陸させているが、それはフィリピン軍が応戦してこないからだ。
もし、中国の武装漁民が尖閣に上陸すると、日本の自衛隊が防衛出動して、数時間で武装漁民は敗北する。したがって中国は、日本相手には武装漁民を上陸させることはない。
中国海軍が中国大陸から太平洋に出るとき、沖縄諸島の宮古海峡を通過するが、海峡幅が290kmしかない。
沖縄本島と宮古島に射程300kmの対艦ミサイルを配備すると、中国海軍は事実上、戦時には太平洋に出られない。
そのため、中国は尖閣諸島を中国領とし、将来的な米中戦争を有利にするという目的があると思われる。
また、中国が台湾に侵攻する際も、日本の自衛隊や米軍が尖閣列島にミサイル部隊を配備すると、中国の航空機や艦船が自衛隊の地対空ミサイル射程圏内に入り台湾侵攻が困難になる。
したがって、中国は台湾侵攻のためにも、尖閣列島を中国領としたい。
中国は、台湾と尖閣に同時侵攻し、数時間で尖閣にミサイル部隊を配備し、自衛隊や米軍の航空機、艦船が台湾に接近することを阻止する作戦(接近阻止・領域拒否 Anti-Access/Area Denial, A2/AD)と思われる。
中国が台湾上陸作戦を実行するには、強襲揚陸艦が20隻~30隻は必要だが、現在は11隻しかない。
中国は、政治も軍隊も「兵法」により動いており、ほぼ100%中国軍が勝てる作戦でないと台湾には侵攻しないと思う。
したがって、2025年~2026年に、中国が台湾に強襲揚陸艦で侵攻する可能性は低い。
最も早くて2027年だと思う。
ただ、中国は、潜水艦も武漢などの内陸部の工場で建造することができるので、密かに強襲揚陸艦を建造している可能性もある。
また、中国はドローン技術が進歩しており、強襲揚陸艦で地上軍を上陸させるのではなく、例えば100万個のドローンで台湾を攻撃する戦略も考えられる。
安易に従来型の「強襲揚陸艦による上陸作戦」だけを考えていると判断を間違う可能性もある。
中国軍は、ペロシ米下院議長の台湾訪問に対抗して2022年8月4日から台湾を取り囲むように弾道ミサイルの発射を伴う大規模な軍事演習を実施した。
さらに、2022年8月15日にも中国軍は、アメリカの議員団の台湾訪問への対抗措置とし軍事演習を実施し、常態化しつつある。
2025年~2025年に台湾侵攻か?
中国の習近平主席が2022年10月の党大会で3期目の国家主席に選出されると、次の任期は2027年となる。したがって、習近平主席としては自分の任期の終わる2027年までには台湾を中国領としたい。
そこから逆算すると、中国が2025年~2026年にも台湾に侵攻する可能性がある。
2021年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン(Philip Davidson)司令官は上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。(筆者注・2021年から6年後は2027年)