出典 防衛省
SM-3 ブロック2Aとは日米両政府がミサイル防衛(MD)の一つとして共同開発している海上配備型迎撃ミサイル(イージス艦発射型)だ。
飛行性能と命中率が飛躍的に向上したので、中国や北朝鮮が持つ弾道ミサイルを迎撃、無力化できる可能性がでてきた。
開発企業は、レイセオン(アメリカ)と三菱重工業(日本)。
2010年、米国防省はSM-3の実験段階での命中率は80%以上と発表している。
SM-3 ブロック2A導入により、中国、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃能力は相対的に低下すると考えられ、世界の軍事力バランスに変化をもたらす可能性がある。
「SM-3ブロック2A」は「SM-3ブロック1A」の改良型だが、その性能は飛躍的に高くなる。
まず射程が2,000kmとなり、1基設置すれば、半径2,000kmの範囲をカバーできる。
つまり1基で日本全土をカバーできる。
また、北朝鮮がテポドン2をロフテッド軌道(山なり軌道)で発射しても迎撃できるとされる。
SM-3ブロック1A | SM-3ブロック2A | |
射程 | 500km~1,200km | 2,000km |
高度 | 160km~600km | 70km~1,000km |
直径 | 34cm | 53cm |
全長 | 6m55cm | 6m55cm |
重さ | 1,500kg | |
キネティック弾頭シーカ | 1波長赤外線シーカ | 2波長赤外線シーカ |
配備 | 2008年配備 | 2020年~2021年 |
値段 | 1発16億円 | 1発20億円~30億円 |
- 発射試験 2015年6月 成功
- 迎撃試験 2015年12月 成功
- イージス艦からの迎撃試験 2017年2月 成功
- イージス艦からICBMを迎撃試験 2020年11月 成功
SM-3 ブロック2Aは艦搭載型なので、海上自衛隊の艦船に搭載配備される。
海上自衛隊の7隻目の最新鋭イージス艦27DDG「まや」(基準排水量8,200トンで2020年就役) 、8隻目のイージス艦28DDG「はぐろ」(2021年就役)に搭載できる。
1段階 | ブースト | 上昇段階 | ミサイル発射直後 |
2段階 | ミッドコース | 中間段階 | 弾頭を分離した状態 |
3段階 | ターミナル | 最終段階 | 大気圏再突入後 |
このうちSM-3ブロック2Aで迎撃できるのはミッドコースフェイズ(中間段階)のみ。
SM3 ブロック2Aの射程は2,000kmなので、横須賀、舞鶴の海上自衛隊基地に1隻配備するだけで、日本全土をカバーできる。
ちなみに羽田~那覇の距離は1,600km、羽田~札幌の距離は800km。
海上自衛隊の誘導武器(ミサイル)の体系は
- 第一段階 艦搭載型のSM-3ミサイルで迎撃する。
- 第二段階 海上発射型のSM-1 SM-2で迎撃する。
- 第三段階 陸上配備型のPAC3で迎撃する。
第一段階 | 対弾道ミサイル | 艦搭載型 SM-3 |
第二段階 | 対航空機、対ミサイル | 艦搭載型 SM-1 SM-2 シースパロー(RIM-7M) ESSM(RIM-162) |
第三段階 | 対航空機、対ミサイル | PAC3 |
最終段階のPAC3の射程は20kmなので、防衛力が弱い。2016年現在射程を30kmまで伸ばす改良がおこなわれる予定。
また、米国製THAADミサイルの射程は200kmだ。
開発経費 日本10~12億ドル(1,300億円)
米国11~15億ドル(1,400億円)
開発期間 2006年~2014年
ノーズコーン | 日本 |
ミサイル誘導部 | アメリカ |
第3段モーター | 日本 |
上段分離部 | 日本 |
第2段モーター | 日本 |
第2段操舵部 | 日本 |
ブースター | アメリカ |
SM-3 ブロック2Aの派生モデル
SM-3ブロック2B 多弾頭型弾道ミサイルに対応、射程を長くする予定。
SM-3ブロック2Aと2B型が配備されるのは2020年以降で、北朝鮮、中国の中距離弾道ミサイルを迎撃できる可能性が高まった。
2010年米国防省はSM-3の実験段階での命中率は80%以上と発表している。
通常の軌道で発射された弾道ミサイルであれば、SM-3 ブロック2Aと2B型により80~90%の確率で迎撃でき、ミサイル防衛の第一段階が完成したと言える。
中国のミサイルを無力化するまでの能力はないが、中国は軍事的に劣勢に立たされることになるだろう。
アメリカは日米同盟、米豪同盟を軸に中国を南シナ海に封じ込めることに成功する可能性が高まった。
南シナ海に封じ込まれた中国は現在、射程8,000kmと言われるSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)の射程を12,000km~13,000kmまで延長するしか対抗手段がない。