民間航空機は普通に夜間飛行しているので、夜間飛行は特別なことではないと思う人が多いだろう。
しかし、民間航空機は、離陸と着陸以外は予め入力した航路をオートパイロット(自動操縦)で飛行している。
戦闘機は決まった航路を飛行するわけではなく、他国のスクランブル機が接近してくるとパイロットは自ら操縦して航路を変更しないといけない。
戦闘機が急旋回すると7~8Gに達し、これを2~3回急旋回を繰り返すと、プロのパイロットでも上下の感覚を失うことがある。
これを専門用語で「バーティゴ(空間識失調)」という。
どちらが上空か海面か全くわからなくなり、墜落の危険性もある。
特に、夜間の海上飛行では目標物が少ないので非常に危険だ。
2016年に「中国空軍の技術は未熟で夜間に海上で空中格闘戦(ドッグファイト)をする能力はない」と書いた。
しかし、2020年3月、中国軍は台湾周辺空域で初の夜間飛行を実施した。中国空軍の夜間飛行能力は大幅に向上してきた。
以下は2016年の情報
2017年1月3日、中国海軍空母「遼寧」は遠洋訓練のため台湾近辺を航行していた。
台湾空軍は夜間に航空機を飛行させて、中国空母「遼寧」の防空能力を試した。
しかし、中国空母「遼寧」からは艦載機「殲滅-15(J-15)」は発艦しなかった。
夜間の空母から発艦することは難易度が高い。
米軍では当たり前に行っている「夜間の空母からの発艦」だが、実際は極めて難易度の高いものだ。
2016年 那覇空港で撮影
那覇空港には自衛隊基地があり、F-15、P-3C、E-2Cなどが配備されている。
たまたま、沖縄にいた時、中国空軍機とスクランブルした自衛隊F-15が接近との報道があり那覇空港に行ってみた。
しかし、報道とは違って午前7~8時の那覇空港は、P-3Cの着陸が多かった。そこから推測すると日本の自衛隊は、夜間は中国軍艦、潜水艦を警戒監視するためにP-3Cを飛行させて、早朝に那覇空港に帰港させているようだ。
個人的経験だが、夜間に航空自衛隊のF-15がスクランブル発進することは少ない。これは、夜間に中国軍の戦闘機Su-27、Su-30が尖閣周辺を飛行することは少ないからだと思われる。
中国情報サイト「サーチナ」が「解放軍Su-27が雨が降る中で夜間飛行 全天候作戦能力を鍛える」と報道した。
自衛隊のF-15が夜間飛行してもニュースにならないが、中国では、中国空軍が夜間飛行訓練しただけでニュースになる。
つまり中国軍にとって夜間飛行はそれほど困難なミッションということだろう。
海上を夜間飛行する場合は、陸上とは違って地上の目標物がないので難易度が高い。現在の中国空軍のパイロットの技術では、夜間の海上飛行はほとんど不可能だろう。
中国軍のプロペラ情報収集機が尖閣周辺を夜間飛行することはあっても、中国軍の戦闘機Su-27、Su-30が夜間飛行することは今のところ少ない。
現在の中国軍には、50~100機で夜間海上飛行をする作戦能力はないと考えられる。