2017年1月9日、中国空軍のH6爆撃機6機、Y8早期警戒機2機、Y9情報収集機1機の合計8機が長崎県の対馬の南の対馬海峡を通過し日本海に達した。
これに対して、まず動いたのは韓国空軍だった。韓国軍F-15K、KF-16の合計約10機が済州島の南海域で中国軍機編隊の警戒態勢に入った。
航空自衛隊は、那覇基地、新田原基地、百里基地、小松基地からF-15J、F-4ファントムなど合計8機~10機がスクランブル発進、さらに浜松基地からE-767 AWACSがスクランブル発進したとされる。
つまり、中国、韓国、日本の戦闘機、爆撃機など合計30機が入り乱れるまさに、戦争前夜の緊急事態となった。
この記事を書いたのは2017年1月10日ですが、2017年1月11日付Newsweek日本版で
「爆撃機6機など中国軍機が無断侵入 日韓30機がスクランブル」
という記事があがっていました。
中国の対馬海峡編隊飛行の目的はなんだったのか?
当ブログでは、中国軍のSu-30戦闘機20機の宮古海峡編隊飛行を予想していた。それに比べると中国軍の今回の飛行は小規模で、しかもSu-30戦闘機を伴わない編隊飛行だった。
しかし、今回の中国軍機の対馬海峡編隊飛行は、稲田防衛大臣の靖国神社参拝に対する報復と思われる。
なぜ、Su-30戦闘機を飛行させなかったのか?
2016年12月の中国軍編隊飛行のとき、自衛隊は中国軍Su-30戦闘機2機に対して自衛隊のF-15J戦闘機10機をスクランブル発進させた。
従来の自衛隊なら2機のF-15Jでスクルンブル発進するだけだった。2016年12月の10機のスクランブル発進というのは、自衛隊の方針が変化したことを意味する。
もし、中国軍がSu-30戦闘機を随伴すれば、自衛隊はF-15Jを10機程度スクランブル発進させる。その場合、中国軍Su-30戦闘機2機と自衛隊F-15J戦闘機10機ならば、中国軍Su-30に勝ち目はなく、中国大陸に逃げ帰るしかない。
中国軍が自衛隊F-15J戦闘機10機に勝つためには、やはり10機以上のSu-30を出す必要がある。
そうなると、自衛隊F-15J戦闘機10機と中国のSu-30戦闘機10機が日本の防空識別圏内で遭遇することになり、空中戦が発生する可能性が高い。
中国軍はそこまでの事態を避けるために、Su-30戦闘機を飛行させなかったと思われる。
中国軍は弱気だから、あえて大きく報道させた
さらに注目すべきは、2017年1月9日の午後9時の「ニュース番組」(某放送局)のヘッドラインで「中国軍機8機が対馬海峡通過」と大きく報道されたことだ。
この日本の某放送局は「日本の新幹線E2系の改良版中国版新幹線CRH2」を「中国が独自開発した高速鉄道車両」と報道するなど中国共産党の言いなりの報道をすることで有名だ。
その放送局が「中国軍用機8機が対馬海峡通過」と大きく報道した。一見、中国にとって不利な報道のように思えるが、なぜ、親中派の放送局が報道したのか?
それは、中国共産党が今回の対馬海峡飛行について「大きく報道」させようとする意図があって、日本の某放送局もそれに従ったのだろう。
つまり、中国共産党は、稲田大臣が靖国に参拝したため、中国軍が強力な軍事的行動をとったということを日本にも中国にもアピールする目的があったと見られる。
中国軍の本音は?
中国空軍宮古海峡編隊飛行ではSu-30戦闘機2機が爆撃機を護衛飛行した。中国空母遼寧が宮古海峡を航行したときは、フリーゲート艦などが随伴した。
それなのに、今回の中国軍機編隊飛行ではSu-30戦闘機が1機も随伴していない。あまりにも不自然な編隊飛行だ。
それは、中国軍が2016年12月に宮古海峡編隊飛行の際、自衛隊F-15J戦闘機10機がスクランブル発進してきたことに動揺しているからだ。自衛隊の本気モードを恐れていると言ってもいいかもしれない。
逆説的に言うと2016年12月の中国軍Su-30宮古海峡編隊飛行で、自衛隊F-15J戦闘機10機と撃墜一歩手前の過酷な空中戦があったこと示唆している。
中国軍は空軍力を増強する
1996年中国は台湾の総統選挙で李登輝氏が総統に当選すると予想されたため、台湾周辺海域にミサイルを撃ち込んだ。
これに対してアメリカは通常型空母「インデペンデンス」と原子力空母「ニミッツ」を台湾海峡に派遣した。海軍力に劣る中国軍は沈黙するしかなかった。
しかし、その後、中国は海軍力を増強し、空母「遼寧」を建造した。
2016年12月のSu-30戦闘機宮古海峡編隊飛行は、このことに匹敵するくらいの事件だった。
中国軍Su-30戦闘機2機は次々とスクランブル発進してくる自衛隊F-15J戦闘機10機にまったく歯が立たなかった。
中国軍Su-30戦闘機は爆撃機の護衛という任務を放棄して、宮古海峡から中国大陸に最短距離で逃げ帰った。
当ブログでは、このことに対して中国軍はSu-30戦闘機20機の大規模編隊で再び宮古海峡を編隊飛行すると予想していた。しかし、実際はSu-30戦闘機を随伴しない爆撃機など8機の編隊飛行にとどまった。
つまりは中国軍は、現時点では自衛隊F-15Jに空中戦を挑んでくる勇気がないということだ。
しかし、それでは内部的に治まりがつかないのでF-15Jを刺激しないように爆撃機で対馬海峡を通過したのだ。
Su-30戦闘機を随伴しないことは、中国軍の弱気と、日本の自衛隊への恐れの裏返しと言える。
Su-30戦闘機は実は編隊飛行していた?
別ルートからの情報では、中国軍は中国の基地から10機編隊で離陸し、済州島手前で2機が中国大陸に引き返したという。この引き返した2機がSu-30かどうかの情報はいまのところない。
しかし、2016年12月の宮古海峡編隊飛行の時はSu-30戦闘機2機が随伴していたことから、今回もSu-30戦闘機2機が随伴したが、途中で引き返した可能性もある。
日本はどう動くべきか?
日本人は、相手が引き下がれば、自分も引き下がる。しかし、中国人は相手が引き下がれば、一歩前にでてくる。
中国軍相手には、中国流に中国が一歩下がったのだから、自衛隊は一歩前に出るべきだ。具体的には、宮古島、石垣へのF-15J派遣や、尖閣列島周辺への自衛隊派遣など現行の法律内でできることはいくらでもある。
稲田防衛大臣が、中国軍の弱気に気付いてどう自衛隊を動かすか注目したい。