2016年2月11日 ドル円110円台に突入
急速に円高が進行している。なぜ急激な円高になったのか?
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原油下落で円高に
2015年1月25日、日本の財務省は2015年の貿易統計速報を発表した。それによると、貿易赤字は、2兆8000億円であった。
2014年の貿易赤字は12兆8000億円だったので、2015年は前年比で約10兆円の赤字改善となった。
これは原油価格や資源価格下落により、日本が支払う原油や資源の代金が10兆円少なくなったことを意味する。
貿易赤字は、円建てで表示されるが、実際の貿易はドル建てで取引されてる。つまり、12兆8000億円の貿易赤字になると、12兆8000億円分の円を売ってドルを買うことになる。
しかし2兆8000億円の貿易赤字なら、2兆8000億円分の円を売ってドルを買えばいい。
つまり、貿易赤字の10兆円縮小とは、ドル買い需要が10兆円分なくなったことを意味する。これもドル売り材料になる。
爆買いも円高要因?
訪日外国人のいわゆる「爆買い」は年間3~4兆円になると言われるが、GDP統計上は「個人消費」ではなく、「輸出」で集計されている。
ただ、財務省の発表した貿易統計速報の「輸出」に含まれるかどうかは、はっきりしない。
しかし、訪日外国人は日本で消費した宿泊費、飲食費は「旅行収支」に含まれる。この旅行収支は2015年上期で約6100億円の黒字だった。年間でも1兆円以上の黒字が見込まれる。
日本は長年、1兆円以上の旅行収支赤字で、1兆円分のドル買い需要があった。しかし旅行収支が黒字化したことで、1兆円分のドル買い需要が消えた。したがって、これもドル売り材料の一つになっている。
ドル円を売っているのはCTA
CTAという巨大ファンドは、「原油売り」、「ドル円でドル売り」、「株式売り」のポジションをとっている。
3市場同時に売ることで、3市場とも連鎖的に下落することになる。
CTAはトレンドフォローを基本とし、逆張りはしないので、結果、「ドル円」、「株式」、「原油価格」の下落は当面続く可能性がある。
ドル円相場の年間変動幅は20円~25円
過去20年のドル円相場の年間変動幅は20円~25円程度だ。今年の上限を1月の121円とすると、下限は96円~101円となる。
可能性としては100円割れもあり得る。
日本の休日にドル円が下がる
2月11日は日本の祝日で、日本勢が動けないときに、欧米のヘッジファンドはドル円を売り崩すことができる。
日本の祝日は海外を比較して多い。グローバル化した市場では、世界と違う日本の祝日は、狙い打ちされる傾向が強い。
日本の政治家は祝日を増やせば、景気が良くなると思っているのだろうか?あまりにも世界市場を知らなさすぎる発想だ。
しかし、日本勢が休日のときを狙ってドル売りを仕掛けるのは、日本勢がいるとドル円は下げ切らないと考えたからだろう。
つまりは、日本勢が市場に参加すると、ある程度までのドルの買い戻しはありえる。しかし、それはあくまでも一時的な買い戻しリバウンドだろう。
世界の投資家の考え
世界の投資家は、伝統的に、自国通貨であっても100%は信用していない。
自分の資産のうち、自国通貨は1/3、外国通貨や外国国債に1/3、金に1/3程度分散投資するのが一般的だ。
海外の投資家にとって、金や銀などの貴金属は通貨と同じような資産として考えられている。
21世紀は、金や銀と同様に原油が資産として投資対象になってきた。
まとめ&補足
日本の貿易赤字減少と言っても依然、年間2兆8000億円の赤字でこれ自体はドル買い需要だ。今回の円高の材料は「日本のドル買い需要が10兆円分減少した」ということにすぎない。
ただ、CAT(ヘッジファンド)が巨額のドル売りを仕掛けてきたら、10円下がったというのも事実だ。個人がFXのドル買いで立ち向かえる相場ではないのも現実だ。
今後3月末にかけ、ヘッジファンドは「ドル売り」材料があれば、ドル売りを継続すると考えられる。3月期末には日本企業は海外からの配当をドル建てで受け取り、それを売却することが多い。
こういうドル売り材料があると、ヘッジファンドはドルを売ってくる可能性がある。
今後のドル円相場の予想
今後1~2週間程度でドルの買い戻しが一時的に115円~117円近辺まで戻る可能性がある。しかし、その後は3月末にかけ、FRBの利上げ見送りや、日本企業の海外配当金などのドル売り材料がある。
したがって、ヘッジファンドがドル売りを仕掛けて、110円を再びトライすると可能性がある。もし110円を完全に下抜けすると1ドル100円の攻防があるかもしれない。