イギリス政府は2016年7月28日、イギリス国内で建設予定のヒンクリーポイントC原発(160万KW×2基)の建設承認を2016年秋まで延期すると発表した。
1965年にヒンクリーポイントA原発1号機(約27万KW)、2号機(約27万KW)が発電を開始したが2000年に運転を停止した。
1976年にヒンクリーポイントB原発1号機(約66万KW)、2号機(約66万KW)が発電を開始し、2016年にも運転を停止する予定。
今回建設されるのは、ヒンクリーポイントC原発(160万KW×2基)で2017年に着工、2025年に発電開始が予定されていた。
ヒンクリーポイントC原発の事業主体はフランス電力(EDF)と中国の原子力企業、中国広核集団(CGN)の2社となる。イギリス企業は事業費が高いことなどから撤退しフランス企業と中国企業の合弁事業となった。
出資比率はフランス電力(EDF)が約66%、中国広核集団(CGN)が約34%となる。
ヒンクリーポイントC原発はフランスが開発した欧州加圧水型原子炉(EPR European Pressurized Reactor)が採用され、その建設費は245億ポンド(約3兆5000億円)とされる。
出資比率通りなら、フランス電力(EDF)が、160億ポンド(2兆3000億円)負担し、中国広核集団(CGN)が85億ポンド(1兆2000億円)を負担することになる。
中国企業の出資した原発をイギリスに建設することは、2015年10月、キャメロン前首相と中国の習近平主席との会談で合意していた。また、キャメロン前首相は、2015年3月に中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に主要欧米諸国として初めて参加表明した。
キャメロン前首相が中国ビジネスの傾倒しすぎていたため、テリーザ・メイ首相が軌道修正を図る狙いがあると思われる。
イギリスの上流階級の多くは150年前、中国ビジネスで成功した者が多い。英国王ウィリアム4世の子孫と言われる上流階級出身のキャメロン前首相が中国ビジネスに熱心だったのは、イギリスの上流階級の要請またはその期待に応えたいという気持ちがあったと思われる。
テリーザ・メイ英首相は、中産階級出身で、そういう上流階級の意見よりもイギリスの国益を重視する政策を採っていくだろう。
コモンウエルス(commonwealth of Nations)とは、イギリス連邦のことで、イギリスと旧植民地の53か国、21億人で構成される。EUから離脱を表明したイギリスはこのコモンウエルスとの関係強化を図ると思われる。
日本もイギリスと関係強化することで、21億人のコモンウエルス市場を開拓できる可能性がある。また、イギリスはMI6などの情報機関を持ち、今でも情報収集能力は世界トップレベルだ。日露戦争で日本が勝利したのもイギリスの情報が重要な要因となった。アメリカの相対的地位が低下する中、日本の独自の情報収集する必要があり、イギリスの重要度は大きい。