イランとサウジアラビアの対立が激しくなっている。
一般にはイランはシーア派、サウジアラビアはスンニ派だから仲が悪い程度の認識しかない。
それだけでは、イランとサウジアラビアの対立を十分に説明できていない。
シーア派とは?
イスラム教でも少数派とされ、その比率は10~20%。しかし、イスラム教信者は世界で16億人なので、少数派のシーア派と言えども約2億人いるとされる。
カリフ(最高権力者)はムハンマドの没後4代目までのカリフ(西暦632年~661年)の血縁者とする。
イランに多く、イラクにも比較的多い。
スンニ派とは?
イスラム教の多数派で、特に東南アジアでは9割はスンニ派とされる。中東でも多数派を占め、サウジアラビアがスンニ派の代表的な国である。
カリフ(最高権力者)をを話し合いで決定する。サウジアラビアの王族や旧イランの王族もスンニ派だある。比較的富裕層にスンニ派が多い。
シーア派とスンニ派の違い
ムハンマドの没後4代目までのカリフ(西暦632年~661年)は分裂がなかった。
その後、ムハンマドの血統を重視する「シーア派」と話し合いによりカリフを決定する「スンニ派」に分裂した。
シーア派とスンニ派の違いはカリフ(最高権力者)をだれにするかの違いだけで、宗教的な違いはほとんどない。
つまり、シーア派とスンニ派の対立は誰がカリフ(最高権力者)になるかという問題であり、宗教的な争いと言うよりも権力闘争に近い。
中東では宗教と政治が分離していない
中東では宗教と政治が分離していない。つまり宗教上の最高権力者である「カリフ」が政治的にも最高権力者になる。
したがって、スンニ派とシーア派の対立点である「誰がカリフになるか」という争いは、宗教的な争いに止まらず、誰が政治的指導者となるかという政治的権力争いとなるのだ。
中東のほとんどの国はスンニ派である
中東の8割の国はスンニ派である。サウジアラビアの王族もスンニ派だ。
そのため、サウジアラビアでも王族に反対する貧困層はシーア派に近い考えをもち、表明上は宗教対立のようだが、実態は反権力闘争の様相になっている。
シーア派が起こしたイラン革命とは
イランではスンニ派であるパーレビ国王に反対する勢力がシーア派となり、スンニ派の王政を打倒した。これがイラン革命(1979年)である。
なぜ、サウジアラビアはイラン(シーア派)を警戒するのか?
サウジアラビアがイランのシーア派と対立しているのは、シーア派が優勢になれば、イラン革命のようにサウジアラビアの王政が打倒される懸念が高まるからだ。
今後の展開は?
シーア派とスンニ派は表面上は宗派対立のようだが、実態は、カリフ(宗教、政治の最高指導者)をめぐる権力闘争のため、この対立は簡単には収束しないだろう。