政府は2022年度当初予算案にレールガン(電磁砲)の研究開発に65億円を計上した。
レールガン(電磁砲)とは、火薬の燃焼ガスではなく、電磁力(ローレンツ力)により、金属弾を発射する兵器。
ちなみに、金属弾は炸裂弾ではなく、単なる金属の塊で運動エネルギーにより敵兵器を破壊する。
レールガンの金属弾の初速は2,000m/s(マッハ6)で、戦車砲の初速1,700m/sを上回り、射程も200kmとされる。
極超音速兵器ミサイルを迎撃
ロシアや中国はマッハ5以上で変則的に飛行する極超音速滑空ミサイルを開発・配備中で、日本の自衛隊が保有する迎撃ミサイルでは迎撃できない。
すでに、中国は極超音速滑空ミサイル「DF-17」を実戦配備した可能性がある。
また、ロシアは、極超音速ミサイル「キンジャール」を2022年3月にウクライナ戦争で使用したとされる。
そのため、自衛隊はレールガンにより極超音速兵器ミサイルを迎撃しようとしている。
しかし、レールガンの弾丸は誘導できないので命中精度に課題があり、自衛隊は迎撃ミサイルとレールガンと併用する考えと思われる。
アメリカは開発断念
アメリカもレールガンの研究を進めてきたが、2020年頃に開発を断念した。
レールガンは大量の電力を消費しレール(砲身)が過熱するため思ったほど連射ができないなどの欠点を克服するには時間がかかると判断したようだ。
さらに中国やロシアはミサイルの射程を200kmから400kmに長射程化しているが、レールガンの射程は200km程度なので中国やロシア軍に勝てないと判断したと思われる。
そもそも、アメリカは本土から離れた海外での使用を想定しており、艦船に搭載する計画だったと思われる。その場合、艦船の発電機では電力が不足する可能性があった。
しかし、自衛隊は日本の国内の陸上にレールガンを設置し、敵の極超音速ミサイルを迎撃することが目的なので射程200kmでも有効で、電力供給の課題も陸上設置型ならば解決できると判断したようだ。
さらにレールガンの弾丸1発のコストは砲身などのシステム全体で考えても200万円で、迎撃ミサイルの価格2億円~5億円よりも圧倒的にレールガンの方が安い。
例えば、レールガン100発(合計2億円)を発射して敵の極超音速兵器ミサイル1発を迎撃できればコスト的には導入するメリットは十分にある。
さらに、中国軍は1機あたり100万円のドローン兵器を開発しており、それらを1発2億円の迎撃ミサイルで迎撃するのはコスパが悪く、自衛隊が保有する迎撃ミサイルはすぐに撃ち尽くしてしまう。
また、石垣島と尖閣列島の距離は約180kmで宮古海峡の海峡幅290kmなので、射程200kmのレールガンを各島に10基ずつ配備すれば敵の尖閣上陸や宮古海峡通過を阻止できる可能性がある。
連射性能
米軍のレールガンの試作機は1秒に10発の弾丸を発射できる。
したがって10基のレールガンから合計1秒で合計100発を発射でき、10秒で1000発を発射できる。
弾幕、散弾のような使用方法をすれば、誘導できない弾丸でも十分に攻撃力・防衛力はあると思う。
自衛隊のレールガンの開発目標
- 口径40mm
- 弾丸初速2,000m/s以上
- レール(砲身)耐久性120発以上
- 開発完了時期2030年頃
レールガンは対艦兵器として有効か?
日露戦争の時代は、目視で敵艦と撃ち合っていた。
しかし、21世紀は敵艦隊と200km~400km離れて、誘導ミサイルの撃ち合いになると予想される。
レールガンの速度はマッハ7と音速の7倍ではあるが、200km先の敵艦隊に到達するのに約100秒かかる。その100秒で敵艦隊は1km以上移動できる。
したがって、レールガンで200km先の敵艦隊を攻撃することはほとんど不可能と言える。
しかし、敵艦隊が尖閣列島周辺に停泊し上陸作戦をするならば、約170km離れた石垣島や宮古島からレールガン10砲~20砲で集中攻撃することができる。
このようにレールガンは限定的な使い方しかできないが、今後の開発次第では「化ける」可能性も十分にある。