2016年12月10日、中国軍はSu-30戦闘機2機、H-6爆撃機2機、情報収集機2機の合計6機で宮古海峡を編隊飛行で通過した。
ちなみに2016年12月10日と11日は航空自衛隊那覇基地で「美ら海エアーフェスタ2016」という航空祭が開催されていたが、自衛隊は那覇基地からF-15J戦闘機2機をスクランブル発進させ、最終的にF-15J戦闘機が10機スクランブル発進するという非常事態になった。
中国軍は「自衛隊F-15Jが妨害弾を発射した」と発表したことから、航空自衛隊のF-15Jがフレアーを発射した可能性がある。
フレアーとは敵機からレーダーロックオンされた場合に、敵ミサイルを回避するために使う「めくらまし」のようなものだ。
したがって、中国軍機Su-30が自衛隊F-15Jを背後からレーダーロックオンした可能性がある。
今回の事象よりも半年前の2016年6月にも沖縄周辺海域で自衛隊機は中国軍機からレーダーロックオンされ「チャフ」や「フレアー」を使用したとされる。
2016年12月11日 筆者撮影
筆者は2016年12月11日から数日間、沖縄に滞在していた。
中国空軍Su-30と航空自衛隊F-15Jの飛行性能はほぼ互角だ。
しかし、航空自衛隊F-15Jはスクランブル任務のため、安全性に配慮して、ゆっくり敵機に近づく。
ここからは筆者の推測ですが、
その時、中国空軍Su-30は突然、急旋回し自衛隊F-15Jの背後に回り込もうとしたのではないか?
自衛隊F-15Jは安全に配慮しゆっくり接近していたので、急旋回したSu-30の動きに一瞬遅れて旋回するしかない。
こうやって空中格闘戦(ドッグファイト)が始まり、数分後に中国空軍Su-30が航空自衛隊F-15Jの背後を取ったのではないか?
実際にレーダーロックオンしたかどうか不明だが、中国空軍Su-30がレーダーロックオンしようと思えばできたと思われる。
同時にスクラブル発進した早期警戒機E-2Cから「後方を取られた」と連絡を受けたF-15Jのパイロットはフレアーを発射して回避するしかなかったと思われる。
模擬戦ならば自衛隊F15Jは撃墜判定となる深刻な事態だったと思われる。この連絡を受けた自衛隊那覇基地では、F-15Jを合計10機出撃させる異常事態となった。
Su-30の航続距離は3,000kmだが、アフターバーナーを使うような空中格闘戦を数分でも行うと大量の燃料を消費し、残りの航続距離はすぐに1,000km以下になる。
今回、中国6機編隊のうちSu-30だけが、宮古海峡から直接中国大陸に帰投したことから、宮古海峡でアフターバーナーを使うような事態が発生していたと思われる。
つまり、自衛隊機F-15Jのフレアー発射、中国空軍Su-30もアフターバーナーを使用したと考えられることから、自衛隊F-15Jと中国空軍Su-30の間で空中格闘戦があった可能性が高い。
その結果、中国Su-30は燃料が足りなくなり、H-6爆撃機の護衛任務を放棄し、中国大陸に最短距離で逃げ帰ったと思われる。
中国空軍Su-30MKKは推力偏向ノズルを装備していないものの原型となったSu-27と同様に旋回性に優れ、空中戦の機動性が高いと思われる。
中国軍のSu-30戦闘機は単機ではF-15Jに勝利したかもしれないが、続々とスクランブル発進してきた自衛隊機F-15J戦闘機10機に対してSu-30は2機しかなく数的不利な状態になり、護衛任務を放棄し中国大陸の基地に帰投した。
結局、中国空軍Su-30戦闘機2機では、那覇基地に配備されたF-15J戦闘機40機に対してはかなわないので、今後、Su-30戦闘機20~30機程度で、宮古海峡を編隊飛行する可能性がある。
ちなみに、中国はSu-30MKK戦闘機を73機保有している。
那覇空港に配備されているF-15Jは40機だが、すぐにスクランブル発進できるのは4機なので、中国軍がSu-30戦闘機を大量に飛行させれば、自衛隊機は数的劣勢となり撃墜される可能性がある。
もちろん自衛隊は早期警戒機E-2CやE-767(AWACS)を保有しているので総合力ではなんとか中国空軍に勝てるが、E-2CやE-767が中国空軍のPL-15(空対空ミサイル)で撃墜された場合、保有数の多い中国空軍Su-30、J-11戦闘機が自衛隊F-15Jを撃墜する可能性が高い。
今回の事件は非常に深刻な事態と言える。
2016年撮影 那覇基地
2016年1月、自衛隊那覇基地に第9航空団が新編された。従来の204飛行隊に築地基地(福岡)の304飛行隊が加わり、2個飛行隊、F-15J戦闘機40機、隊員1,500人体制となった。
この304飛行隊の部隊マークは「天狗」で、九州の英彦山に伝わる天狗伝説をモチーフとしてデザインされた。