本格的な米中戦争は起こらない?
2021年の中国の国防費は公式には22兆5000億円だが、実質的には年間40兆円とも言われる。
一方、アメリカの2020会計年度の国防予算は7,380億ドル(約80兆円)であり、依然、軍事力ではアメリカ軍の方が強大であり、全面戦争になればアメリカ軍が勝利するだろう。
しかし、中国本土から台湾は最短130kmと近いが、アメリカ本土から台湾までは約1万1000kmと遠い。
したがって、中国が台湾に侵攻した場合、在日米軍が局所的な応戦をするかもしれないが、米軍全体が反撃を開始するには1か月以上かかる。
その間に、中国軍は50万人の人民解放軍を台湾に上陸させ、地対空ミサイル(S-400など)や地対艦ミサイルを台湾全土に配備すると予想される。
それでも、軍事力で上回るアメリカ軍は、中国軍が台湾に配備した地対空ミサイルや地対艦ミサイルを無力化できる。
しかし、米軍の空爆だけでは、台湾に展開した中国人民解放軍50万人のうち20万人は生存すると予想される。
ドイツ陸軍の「攻撃三倍の法則」によれば、上陸する側の兵力は防御側の3倍が必要となる。
仮に、台湾に展開した中国人民解放軍が20万人生存するならば、米兵は60万人の上陸部隊が必要になる。
ベトナム戦争でアメリカ軍が投入した兵力は50万人、1945年の沖縄戦でのアメリカ軍の上陸部隊は18万人(艦船を含む総兵力は55万人)だった。
して、沖縄戦のアメリカ軍の死傷者は約6万6000人に達した。
ちなみに、沖縄戦での日本軍の兵力は約10万人だったが、うち2万人は急遽兵士として集められた防衛隊・義勇隊・学徒隊だったので、実際の日本軍の兵力は8万人程度だったと思われる。
綜合的に考えると、アメリカ軍が台湾戦に投入できる兵力は上陸部隊が最大50万人、艦船など支援部隊が20万人の総兵力70万人ではないか?
それでも、米軍の人的損害は10万人規模になる可能性がある。
また、米軍が台湾に上陸すると中国が米国本土に核ミサイルを撃ち込む可能性もある。
一般のアメリカ国民にとって、アメリカ本土(U.S mainland)から1万km以上離れた台湾を中国から奪還するために、アメリカ本土が中国から核攻撃を受けることは割に合わないと考えるだろう。
したがって、中国が台湾に侵攻した場合、アメリカ軍は空母打撃群を東アジアに派遣し、かなりの戦闘が起こるかもしれないが、最終的に米軍は台湾に上陸しない可能性がある。
現時点で、米国は、中国が台湾に侵攻しないように外交的に押さえ込もうとしているだけであって、実際に中国が台湾に侵攻した場合、2014年のロシアのクリミア侵攻と同様に米国は経済制裁にとどまるのではないか?
2021年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン(Philip Davidson)司令官は上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。
中国の経済成長は著しいが、2027年には人口でインドに抜かれ、2028年から人口が減少すると予想されている。さらに2035年には65歳以上の高齢者人口比率が20%を超えると予想されている。
つまり、中国の経済力が歴史上最も強大になるのが2025年~2040年の15年間なのだ。
もし、この時期に中国が台湾に侵攻しないなら、中国は永遠に台湾を自国領とすることはできず、太平洋へも自由にアクセスできないことになる。
逆に、米国から見れば、2040年頃まで中国が台湾へ侵攻しなければ、アメリカが世界一の超大国の地位を維持できることになる。
そのために、中国が台湾に侵攻しないように外交的に中国を押さえ込もうとしている。
しかし、中国が台湾に侵攻した場合、米軍が台湾に上陸して台湾を解放することはないと思う。
個人的には親日国家である台湾を応援しているが、もし日本の自衛隊が台湾を軍事的に支援した場合、中国は日本を核攻撃し、日本人数百万人が犠牲になる可能性もある。
そこまでするなら、憲法改正して台湾と安全保障条約を締結すべきだ。逆に言うと、憲法改正もせず、台湾との安全保障条約もないまま、日本の自衛隊が台湾の解放のために台湾上陸作戦に参加することは考えにくい。
やはり、自衛隊の活動は尖閣とその周辺海域にとどまるのではないか?
中国が台湾侵攻に失敗すれば、習近平主席は、中国共産党内部や国民から批判され、失脚するのは間違いない。中国の権力闘争の敗者は、場合によっては事実上、軟禁されたり、死に追いやられたりする。
したがって、中国が台湾に侵攻し、アメリカが台湾奪還作戦を実行するなら、中国の権力者はグアムや在日米軍基地に対して核攻撃する可能性は十分にあるし、アメリカ本土への核攻撃も想定して米軍は動くと考えるべきだ。