イギリス国内では、EU離脱が多数派を占める勢い
イギリスは2017年末までに「EU離脱」の是非を問う国民投票を実施することが決まっている。この国民投票は2016年6月23日に行うと発表された。
イギリスで何が問題になっているのか?
イギリス国内のEU離脱派の主張は、難民(移民)問題だ。EU加盟国を中心にヨーロッパ26ヶ国はシェンゲン協定により、自由に国境を超えることができる。
東ヨーロッパなどの所得の低い国々から、比較的所得が高く、福祉が充実しているイギリスに大量に移民してきた。
これがイギリスの福祉水準を低下させ、またイギリス人の失業率を高めたと言われている。
なぜ急速にイギリスの世論が悪化したのか?
2007年にEUに加盟してルーマニアとブルガリアについては、国内で働くよりも外国に移住して社会保障を受給した方が生活水準が高いとの見方があった。
実際、2006年のルーマニアの最低月額賃金は90ユーロ、イギリスの最低月額賃金は1200ユーロ(ポンドをユーロに換算)であった。
そのため大量の移民がイギリス、フランス、ドイツに移住すると見られたため他のEU加盟国は最長7年は他のEU加盟国での就労制限が認められた。
EU加盟国の中にはルーマニアとブルガリアへの移民制限をしなかった国もあり、EU加盟後300万人のルーマニア、ブルガリア人が国外に移住したと言われる。
その就労制限が2013年末に終了したため、2014年からイギリスには東ヨーロッパの移民が多くなってきた。
イギリスのキャメロン首相(保守党)の方針
イギリス国内のEU離脱意見を材料に、EUに対して、イギリスに有利な加盟条件を引き出すことで、EUに残留し、また同時にイギリス国内の世論も押さえ込む方針だ。
イギリスへ移民したEU諸国民に対して4年間は雇用関係の手当などの社会保障の一部を給付しないという改革案を提案している。
今後の展開は?
2016年のイギリスの世論調査では、EU離脱派は45%、EU残留派は36%とEU離脱派が多数になっている。
EU離脱か残留を問う国民投票は2016年6月にも実施される。一時期、2016年9月までずれ込むとの見方がでていた。しかし、イギリスのキャメロン首相がEU改革案が合意されたことを受け、EU残留に自信を持ったと考えられる。
イギリスはEURO(ヨーロッパ統合通貨)に参加していない
イギリスを除くほとんどのEU加盟国(19ヵ国)はEURO(ユーロ)という通貨を使用している。しかし、イギリスは依然、ポンドのままだ。
EUの通貨ユーロとイギリスのポンドの為替相場は固定相場ではなく、変動相場制だ。したがってイギリスのEU離脱の可能性が高まるとイギリスポンド売りが加速すると見られている。
一説には、イギリスポンドはEU離脱で約20%対ユーロで下落すると言われいる。しかし、逆にEU残留が決定するとイギリスポンドの買い戻しが入ってポンド上昇の可能性もある。