2016年12月2日、トランプ次期大統領は台湾の祭英文総統と電話会談した。これに対して、中国は「一つの中国の原則」に反すると反発し、中国海軍「遼寧」空母艦隊を西太平洋に初めて出航させた。
果たして2017年、米中対立はどうなるのか?
なぜ、トランプ次期大統領は台湾総統に電話したのか?
台湾へ武器輸出をするため
トランプ次期大統領は「台湾への武器輸出を強化する」と明言している。トランプ次期大統領が台湾総統に電話したのは、武器輸出というビジネスが目的だった。
つまり、トランプ次期大統領は台湾へ武器輸出さえできればいいわけで、あえて中国との対立するつまりはない。もちろん、電話の意味は一つではなく、中国の反応を見るという目的もあっただろう。
米国内の保守層の支持を固めるため
トランプ次期大統領はアメリカの保守派の支持で大統領選挙に勝利した。その保守層の支持を固めるためにも、中国に対しても強気のアピールをする必要があったと考えられる。
もし、大統領就任後に、台湾総統に電話すると、中国を刺激することになる。しかし、大統領就任前ならば、「民間人」として電話したと中国の批判をかわすことができる。
つまり、台湾総統と電話会談できるのは、大統領就任前しかなった。逆に言うと、トランプ次期大統領は、大統領就任後、中国に配慮し台湾総統に電話しない可能性がある。
一見、対中国強硬派のように見えるトランプ次期大統領だが、実際は「米国内の保守層の支持」と「対中国関係の維持」という2つを天秤にかけた、ぎりぎりの判断だったかもしれない。
中国の反応
空母艦隊派遣
中国はトランプ次期大統領と台湾総統との電話会談に反発し、中国海軍「遼寧」空母艦隊を西太平洋に初めて出航させた。しかし、実際は日本の宮古海峡を通過し、台湾周辺の南シナ海に至るルートをとった。
アメリカのグアム基地を威嚇するようなルートを航行しなかったことから、中国もアメリカと武力衝突することを望んでいないと思われる。
対アメリカ報復
中国は、アメリカが台湾に武器輸出することに反対しており、実際にアメリカ企業が台湾に武器輸出をするとアメリカに報復する可能性が高い。しかし、軍事的な衝突を望んではいないので、中国に進出しているアメリカ企業に対して、軽微な法律違反を理由に課徴金を請求したり、中国事業に必要な許可を遅らせたりする可能性が高い。
また、中国がアメリカに対してサイバー攻撃を仕掛けたり、北朝鮮の核、ミサイル開発を容認し、北朝鮮を利用し、アメリカへの脅威を大きくする可能性もある。
最終的には米中協調の可能性もある
トランプ次期大統領はビジネスライクに外交をする可能性がある。ビジネスの世界では、最初に相手方が容認できないほどの高い要求を出し、それから徐々に要求を下げるという手法がある。
トランプ次期大統領は、この手法で中国にも対応すると思われる。トランプ次期大統領の最も高いレベルが「大統領就任前の台湾総統との電話会談」であるなら、トランプ次期大統領はこれ以上の米中対立をあえて仕掛けることはないと思われる。
大方の見方は、トランプ次期大統領は中国ビジネスを優先し、ことさら中国と対立することはない予想している。
もっとも、次期大統領スタッフの中には対中国強硬派もいるので、トランプ次期大統領が望まなくても、軍事的に米中対立が激化する可能性もある。
日本にとって最悪の展開は米中露の3国協調体制ができることだ。これは絶対に回避しないといけない。