北方領土返還は実現するか?
2016年12月15日、ロシアのプーチン大統領が来日し、山口県で安倍首相と会談する。そこで北方領土返還が決定される可能性がでてきた。
すでにプーチン大統領、安倍首相、日本の経済産業省の間では、2島返還で合意ができているとされる。
これに反対しているのが外務省、石破氏などの自民党の保守派、アメリカ政府だ。外務省は、4島の帰属が日本にあることをロシアが認めれば、「2島先行返還」を認める方針と言われる。
対ロ経済援助
歯舞群島、色丹島の2島返還で日本側から対ロシア経済援助の総額は6,000億円、4島返還で3兆円と予想される。
1990年、当時の西ドイツは東西ドイツ統一の際に旧ソ連に対して旧ソ連軍撤退費用150億マルクを含む総額200億マルク(約1兆6000億円)の経済援助(無利子融資など)を実施した。
アメリカは2島返還に難色
1956年、日ソ共同宣言で旧ソ連は歯舞群島と色丹島を日本に返還すると約束した。これに反対したのが、アメリカだ。
アメリカは、米ソ緊張が続く中、日本が旧ソ連と接近することを警戒した。当時のアメリカの国務長官ダレスは「日本が2島返還で妥協するなら、アメリカは沖縄を返還しない」と日本を恫喝した。
これがいわゆる「ダレスの恫喝」だ。
この結果、日本は、北方領土返還よりも沖縄返還を優先した。
1989年、ベルリンの壁崩壊
1990年ドイツは旧ソ連に200億マルク(約1兆6000億円)経済援助を提供し、東西ドイツの統一を実現した。このドイツとの外交交渉が優先し、北方領土問題は先送りされた。
ドイツ統一後、ゴルバジョフ大統領は、日本の北方領土返還交渉に臨んだ。しかし、日本の経済援助2兆円と引き換えに北方領土を返還するという交渉中、政敵のエリツィンは、「ゴルバチョフは、金で領土を売る」と批判した。
この結果、ゴルバチョフ大統領との、北方領土返還交渉はとん挫した。
エリツィン大統領時代
大統領就任前、エリツィン氏は、北方領土返還に否定的と思われていた。しかし、それはゴルバチョフ氏を批判するため発言であり、大統領就任後後は、日本に北方領土返還する方針をとった。
しかし、エリツィン大統領の健康状態の悪化、1998年の経済危機、橋本龍太郎首相の政界引退により北方領土返還交渉は中断した。
プーチン大統領時代
ロシアのプーチン大統領は、2島返還する用意がある。残り2島については、返還するとは言っていない。日本は残り2島についても継続交渉を主張しているので、それと矛盾なく整合性をとる形ができれば2島返還で決着する可能性がある。
日本の経済協力は2島返還で約6,000億円、4島返還で2兆円~3兆円になると予想される。
ロシアの弱体化
旧ソ連 | ロシア連邦 | 日本 | |
面積 | 2,240万㎢ | 1,710万㎢ | 37万㎢ |
人口 | 2億9000万人 | 1億4600万人 | 1億2800万人 |
ロシア連邦は旧ソ連時代から面積で23%減少、人口も40%減少している。また最近の資源価格の下落やクリミア紛争による西側諸国の経済制裁によりロシアの経済状態は極めて悪化している。
中国の脅威
極東ロシアの人口は600万人で、10年で20%も人口減少している。一方、中国の東北分の人口は約1億人に上る。
中国東北部の省 | 人口 |
黒竜江省 | 3,800万人 |
遼寧省 | 4,300万人 |
吉林省 | 2,700万人 |
合計 | 1億800万人 |
極東ロシアが経済的に中国に支配されるのは時間の問題だ。そうなれば、ロシアが北方領土を維持することが困難になる。50年100年待てば、北方領土は日本に返還される可能性がある。
今後の見通し
安倍首相とプーチン大統領は2016年だけで5月、9月、11月、12月と4回も会談するこになる。これで、北方領土返還交渉がまったく進展しないとは考えられない。
最低でも日本は対ロシア経済援助2,000億円を実施し、見返りとして日本は歯舞群島、色丹島の共同開発権、あるいは漁業権の獲得すると予想される。
メインシナリオ
「日本とロシアは2島返還で合意し、残り2島については、共同開発などを継続交渉する」という共同宣言に落ち着くと考えられる。
日本側は「共同開発など」の「など」に領土問題を含めると解釈し、日本国内向けに説明する。ロシア側は「など」には領土問題は含めないと解釈してロシア国内向けに説明する。
2島先行返還しても、残り2島が完全に日本に返還することはないだろう。
国後島、択捉島については、日本人の居住を認め、日本企業とロシア企業の取引については日本の法律を適用するなど、領土としてはロシア領だが、実質的に日本が開発できる環境を整えると考えられる。
日本の経済協力は2島返還で約6,000億円、4島返還で2兆円~3兆円になると予想される。
安倍首相は、父親がなしえなかった北方領土返還を実現したいと思っている。
しかし、領土問題については一切の妥協をすべきではない。100年でも1000年でも言い続ければいい。
ロシアは経済的に追い込まれているので、数十年以内に日本の返還される可能性がある。
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