ロシアのプーチン大統領は2016年3月15日からロシア軍をシリアから撤退させつつある。
撤退するのは一部部隊だけ
今回撤退するのは、2015年9月からシリア反政府勢力への空爆のために派遣された空爆部隊だ。依然、ロシアは、シリアの地中海沿岸のラタキア空軍基地とタルトゥース海軍基地に一定の兵力を維持している。
撤退の理由
ロシアは、地中海沿岸のロシアの空軍、海軍基地を維持することを最重要政策としている。2015年9月にロシアが軍事介入したのも、シリアのアサド政権を存続させることにより、シリアにあるロシア軍基地を維持するためだ。
ロシアによる空爆の結果、アサド政権は勢力を回復しており、ロシア基地存続というロシアの目的は達成されたと考えられる。
シリア和平会議再開
シリア和平会議は2016年1月にスイスで始まったが、一時中断されて、3月に再開される予定。
ロシア軍撤退により、アサド政権の後ろだてはやや弱くなり、アサド政権が妥協する可能性が高まる。国際的にロシアがシリア和平に協力的であるとの印象を与えることができる。
泥沼化を避けたロシア
ロシアはアフガニスタンやチェチェン紛争など、泥沼の紛争を経験しており、さらにシリアでの紛争を抱えることを避けたと考えられる。
これ以上ロシアがシリアに止まるとISなどイスラム勢力とチェチェンのイスラム勢力が連携してロシア国内でテロを拡大させる可能性もあり、ロシアの撤退は現実的な判断だった。
今後の見通し
シリア問題の根本的な解決策はない。停戦合意できてもそれは一時的だろう。ロシア側から見れば、アサド政権が存続すればロシア基地を維持できるのでそれでいい。あえて、シリア問題を解決するメリットはあまりない。
アメリカにしても地上軍派遣は数万人単位の犠牲を伴うので可能性は低い。