2016年4月30日、日本の岸田外相と中国の王毅外相の日中外相会談が行われた。中国側は「日中関係の停滞の責任は日本にある」とし日本に対する不満を表明した。
豪次期潜水艦受注
2016年4月、豪次期潜水艦選定で日本の「そうりゅう型」潜水艦は受注できなかった。2016年2月に中国は豪に対して日本の「そうりゅう型」潜水艦の導入に反対の立場を表明しており、その通りになった。本来であれば中国にもっと余裕があるはずだが、中国側には外交的に余裕のない様子だった。その原因はなにか?
やはり、中国の南シナ海への海洋進出に対して日米が連携して反対していることが原因だろう。豪次期潜水艦受注についても、日本の「そうりゅう型」は選定されなかったが、世界の外交関係者は中国の潜水艦は日本の「そうりゅう型」潜水艦に勝てないという認識が広まったことも中国側の不満なのかもしれない。
そうりゅう型潜水艦の性能
海上自衛隊の「そうりゅう型」潜水艦は水深700~900mまで潜航でき、搭載している89式魚雷は水深900mから発射できる。中国の潜水艦に搭載されている魚雷は水深400mで圧潰すると推定される。
したがって水深700m~900mまで潜航できる日本のそうりゅう型潜水艦を攻撃する手段は中国にはない。つまり、そうりゅう型潜水艦は中国から攻撃されることなく、一方的に中国の潜水艦を攻撃できる。
もし南シナ海で軍事衝突が起きればどうなるのか?
中国潜水艦は日本の潜水艦を探知できないまま、一方的に攻撃される。中国の潜水艦を壊滅させた後、アメリカの空母機動艦隊が南シナ海に入っているシナリオが考えられる。南シナ海で軍事衝突があれば中国に勝ち目はない。
今まではこのような見解は一部の軍事専門家の一意見でしかなかった。しかし、豪次期潜水艦受注で中国側が日本のそうりゅう型潜水艦に反対したことから、中国の潜水艦は日本の潜水艦に勝てないということが世界的な共通認識になってしまった。
中国の潜水艦は300mしか潜れない。日本の潜水艦は700~900m潜れる。日本の89式魚雷は水深900mから発射できる。中国の魚雷は水深400mで圧潰する。だれで見ても中国に勝ち目はない。
しかも、そうりゅう型潜水艦の航続距離は約6,200km、日本の呉基地から南シナ海まで往復できる。また、沖縄近辺で洋上給油すれば、南シナ海での活動時間はそれだけ伸びる。
呉基地には5隻のそうりゅう型潜水艦が配備され、横須賀基地には2隻のそうりゅう型が配備されている。なぜ、呉基地に重点的に「そうりゅう型」潜水艦を配備しているかというと、呉の方が南方海域に近いためだ。
現在、日本の潜水艦は17隻+2隻(練習艦)だが、2021年までには22隻+2(練習艦)まで増強される。6隻は南シナ海に常時展開できるようになる。
その後30隻まで増加させれば、常時10隻以上南シナ海に展開できる。そうなれば、中国は軍事的に南シナ海を支配できない。潜水艦の耐久年数は30年以上なので、日本は古くなった潜水艦を退役させなければ、自然と30隻まで増加させることができる。
中国共産党幹部は軍事の専門家ではないので、今まで、漠然と軍事的に日本に勝てると思っていたのかもしれない。しかし、今回の豪潜水艦受注で、中国軍は、中国共産党幹部や中国外交部を利用して、豪が日本の「そうりゅう型」潜水艦を導入することを阻止する必要があった。そのため、「中国の潜水艦は日本の潜水艦には勝てない」と説明したのかもしれない。
一般の中国人までも、中国の潜水艦は日本のそうりゅう型潜水艦に勝てないと認識したかもしれない。つまり、中国の弾道ミサイル搭載潜水艦はいつでも無力化される状態で、中国は核抑止力を失うという状態に気が付いたのかもしれない。