
高市政権は、日本の資源安全保障を根本から見直す政策として、南鳥島周辺海域に眠る「海底レアアース泥」の本格採掘に踏み切る方針を固めつつある。
これは従来の資源政策とは異なり、採算性よりも国家安全保障を重視した国家プロジェクトと位置付けられている。
日本は長年、ハイテク産業に不可欠なレアアースを中国に大きく依存してきた。2010年には輸入量の約90%を中国に頼っていたが、その後、調達先の多様化を進めた結果、2025年時点では依存度は約60%まで低下している。
しかし、それでも過半数を中国に依存している現状は、日本経済にとって大きなリスクとなっている。2025年のレアアース輸入額は約1,000億円とされるが、中国産は価格が非常に安いため、他国産や国内開発ではコスト面で不利になりやすい。この価格差こそが、日本が脱中国依存を進めにくい最大の要因だった。
状況が大きく変わったのは、2025年の米中対立である。中国はトランプ政権の対中関税に対抗し、米国向けレアアース輸出禁止を示唆した。この動きはアメリカ産業界に衝撃を与え、関税交渉は2026年11月まで延長されることになった。
さらに2026年1月、中国は日本に対しても事実上の輸出規制を実施したとされる。この出来事は、日本政府に対し「資源が外交カードとして使われる危険性」を強く認識させる転機となった。
こうした背景のもと、高市政権は海洋資源開発を国家戦略の柱に据えている。日本の排他的経済水域である南鳥島周辺には、世界最大級とされるレアアース資源が存在すると確認されている。
海洋研究船「ちきゅう」は、水深約6000メートルの海底からレアアースを含む泥の回収に成功しており、商業化に向けた技術検証が進められている。
ただし最大の課題はコストである。水深6000メートルから資源を採掘するには高度な技術が必要で、年間3,000億円から5,000億円の費用がかかると試算されている。しかし、日本の国家予算約120兆円と比較すれば、安全保障を目的とした政策投資としては十分に成立する規模だと考えられている。
- レアアース泥(南鳥島):中国の陸上鉱山の20倍の品位を持つ、世界最高品位
- 資源量(100平方キロ):日本の年間需要の数十年から数百年分
2026年3月19日に予定される日米首脳会談は、この資源問題が重要な議題になる可能性が高い。4月にはトランプ大統領の訪中も予定されており、その前に同盟関係の結束を確認する意味合いがあるとみられている。
特に注目されるのが、レアアース供給の問題だ。アメリカは半導体やAI分野で優位に立っているが、ハイテク産業を支えるレアアースの精製能力では中国が圧倒的な影響力を持っている。供給が止まれば、製造業全体が深刻な影響を受ける可能性がある。
そのため、日本が海底レアアースの採掘に成功し、国内だけでなくアメリカにも供給できる体制を構築すれば、日米同盟は軍事だけでなく資源面でも強化される可能性がある。
高市政権は、海底レアアース開発を国家安全保障の中核政策として推進する姿勢を明確にしている。国際社会では近年、世界がブロック化し、資源は単なる経済問題ではなく安全保障問題として扱われるようになっている。
年間数千億円の投資は巨額に見えるが、供給が途絶した場合、日本の製造業が受ける損失を考えれば、リスク回避としての意味は非常に大きい。むしろ、この投資は将来の産業基盤を守る保険とも言える。
海底レアアース開発が実現すれば、日本は長年続いてきた「資源輸入国」という立場から脱却する可能性がある。短期的には採算性の課題が残るものの、長期的には産業競争力と安全保障を支える重要な基盤となる可能性が高い。
高市政権の資源政策は、日本を戦略資源の供給国へと転換させる挑戦とも言える。2026年3月19日の日米首脳会談は、その方向性を国際社会に示す重要な外交舞台となる可能性がある。
