中国政府の言う「新常態」(ニューノーマル)とは、生産から消費経済に移行し、中速度成長を維持するという経済成長モデルのこと。
しかし、中国は人件費高騰から生産コストが上昇し、輸出競争力を失いつつある。その輸出が不調なら、内需拡大なんて無理、中国政府の荒唐無稽の虚言とも思える。
中国政府の目指す「新常態」(ニューノーマル)の本当の狙いを解説する。
アメリカは米ドル札を刷るだけで、世界中から物が買える国だ。アフリカ、南米、アジアで、鉱山から鉄鉱石を掘り出し、日本人がそれらを輸入して、鉄鋼を作り自動車を作り上げる。
数千、数万時間の多くの人々の労働の結果、完成した自動車をアメリカ人はドル札を刷るだけで、買うことができる。
これがアメリカという国の本質だ。アメリカ経済の強さの根幹は「基軸通貨ドル」と「軍事力」だ。
中国政府の言う「新常態」(ニューノーマル)の、本当の目標は、アメリカのように人民元を基軸通貨にすることだ。
人民元が基軸通貨になれば、中国政府は、人民元を印刷するだけで、世界中から鉄鉱石、石油を買える。そして貿易赤字になったとしても、人民元を印刷するだけで資産が増加する。
これが中国政府の言う「新常態」(ニューノーマル)の目指している世界だ。
日本は東京オリンピック、大阪万博と契機とし、1ドル=360円の通貨安で急速に経済成長した。1980年ころ、中国は日本の経済成長モデルを徹底的に研究した。
その結果、中国政府は日本の経済成長モデルをそのまま真似をした。
- 北京オリンピック
- 上海万博
- 人民元安による輸出企業の成長
中国は日本の経済成長モデルを模倣した結果、日本のGDPを抜き、今や日本のGDPの2倍の経済大国になった。
そして、今度は、アメリカを研究し、アメリカの強さの本質が「軍事力」と「基軸通貨」にあると見抜いた。
アメリカの製造業は日本企業には勝てない。その理由は、アメリカの社会は一部のエリートだけがいて、一般の労働者の水準は低く、一般労働者はマニュアル通りに働くことしかできない。
日本の場合、現場の労働者の能力が高く、エリートが机の上で設計したものを現場で改善案をだし、より効率的、より高性能な製品を作り上げる。これはアメリカにはできないことだ。だからアメリカの製造業は日本企業に勝てない。
そこで、アメリカの製造業は中国に工場建設して中国人の安い労働コストを利用して生産することしにした。その結果、アメリカ企業は中国で低コスト生産に成功した。中国で生産し、それをアメリカに輸入するだけで、日本企業に勝利した。
これが「インフレなき経済成長」=(ニューエコノミー)の実態だ。中国で低コストで生産し、アメリカに輸入するだけで、アメリカ企業は莫大な利益をあげられた。しかもアメリカ国内で雇用も生産もしないのでアメリカ国内ではインフレは発生しない。
そういう意味でアメリカ企業と中国政府はギブアンドテイクの関係にある。そのアメリカ企業の政治的影響でアメリカ政府はここ20年、中国融和政策をとってきた。
中国が「新常態」(ニューノーマル)を目指す公表した結果、アメリカは中国がアメリカの軍事力と基軸通貨にとってかわる野望を持っていることを確実に理解した。
アメリカが「基軸通貨」と「軍事的優位性」を失えば、アメリカという国は弱体化する。そうなれば、今までのようにドル札を刷るだけで、世界中から物を買え、貿易赤字を垂れ流しても経済成長できるという経済的優位性を失うことになる。
今後、米中は、本格的に対立する時代に入っていくだろう。