2016年8月6日、中国漁船230隻~400隻と中国海警局船最大15隻が尖閣列島接続水域に侵入、一部は日本の領海侵犯をした。
その後8月11日に漁船および中国海警局船が一斉に撤退した。このとき、中国漁船の衝突事故が発生、日本の海上保安庁が救助した。
このことで、中国は尖閣を奪取もできず、逆に、日本に尖閣列島周辺の管轄権があることを認めたことになった。このことで、「習近平主席は外交音痴」と揶揄する意見がでてきた。はたしてそうなのだろうか?
中国には本当の意味の外交はない
中国共産党は歴史的に激しい権力闘争をしている。そのため、中国共産党主席の仕事のほとんどは中国国内の権力闘争だ。中国外交は、国内の権力闘争の延長でしかない。
つまり、日本の首相の靖国参拝を阻止したという成果は、中国国内の対立派閥を押さえ込む政治的材料にしかすぎない。逆に日本の主要閣僚が靖国参拝すれば、反対派がそれを材料に中国主席を批判する。
そもそも、中国は近隣諸国と親密にしようとか、協力しようという気がない。それは、中国の権力闘争で負ければ、文化大革命のように、失脚し、場合によっては拘束されるなど命がけの戦いだからだ。
そんな命がけの権力闘争をやっているのだから、まともな外交ができるはずもない。
中国漁船を救出した海保は管轄権を確立したか?
海保は中国漁船の衝突事故で中国漁民を救助した。このことで、尖閣の管轄権は日本にあることが証明されたという意見がある。しかし、それは薄っすらとした管轄権の行使であって、中国海警局船が再び、尖閣領海に侵入すれば、消えてしまうようなものだ。したがって、このことは習近平主席の致命的失敗とはならない。
中国は稲田防衛大臣の靖国参拝を阻止した
習近平主席の狙いは稲田防衛大臣の靖国参拝を阻止することにあった。米国は靖国参拝で東アジアが不安定になることを懸念していた。そこで日本政府は米国に配慮し8月15日の参拝を避け8月12日~14日に前倒し参拝することで政治決着を図ろうとした。
しかし、中国政府は、日本政府の案に妥協しなかった。そのため8月6日~11日まで長期間の日中交渉が続いた。最終的に中国がホンハイ(台湾)のシャープへの出資を承認することで、日本側が折れた形で稲田防衛大臣の靖国参拝を見送った。
結果的に中国習近平主席は、なんら譲歩することなく、日本側に靖国参拝を見送らせたことになる。中国漁船にしても、自作自演で尖閣に接近したのであって、撤退しても中国にデメリットはない。ホンハイのシャープ出資についても、本来は6月までに承認するはずだった。
日本は外交的に勝利したのか?
従来、日本は、首相、外務大臣、官房長官の主要閣僚は中韓へ配慮しの靖国神社に参拝しないという政策をとってきた。防衛大臣はこの主要閣僚ではなく、靖国参拝自粛の対象にはなってなかった。
しかし、今回、防衛大臣も靖国参拝、自粛と言う前例作ってしまった。外交的には日本は敗北したというべきだ。
まとめ
今回の中国漁船尖閣接近事件は中国側の完全勝利に終わった。日本は首相、外務大臣、官房長官の3主要閣僚の靖国神社参拝自粛に加えて、防衛大臣も自粛と言う前例を飲まされた。