「人手不足倒産」が増えています。
少子高齢化によって働き手そのものが減っているため、企業にとって人材確保が難しくなっているのは事実です。
しかし、人手不足倒産を単純に「日本の労働人口が減ったから」と説明するだけでは、本質を見誤る可能性があります。
実際には、賃金が低い、休日が少ない、残業が多い、職場環境が悪いなど、労働条件の改善が進まなかった企業から人材が流出し、事業を継続できなくなるケースもあります。
私は、人手不足倒産の増加は「企業淘汰」が進んでいる側面もあると考えます。
もちろん、人手不足倒産のすべてがブラック企業というわけではありません。
例えば、建設業、物流業、介護業、飲食業などでは、業界全体で人材が不足しています。
待遇が悪くなくても、そもそも必要な人数を確保できない企業があります。
一方で、労働条件に問題がある企業ほど、人手不足の影響を強く受ける可能性があります。
| 項目 | 人材が集まりにくい企業の特徴 |
|---|---|
| 給料 | 同業他社より低い |
| 休日 | 年間休日が少ない |
| 労働時間 | 残業が多い |
| 職場環境 | 人間関係やパワハラなどに問題 |
| 採用 | 求人を出しても応募が少ない |
| 定着率 | 若手社員が短期間で退職 |
| 生産性 | 人手に依存し、省人化が進んでいない |
こうした企業では、人手不足が深刻になるほど経営が苦しくなります。
これまでの日本では、企業が比較的安い賃金で人材を確保できる時代が長く続きました。
多少給料が低くても、
「他に仕事がないから働く」
という労働者が存在したためです。
しかし、労働人口が減少すると状況が変わります。
人材を確保するためには、企業側が選ばれる必要があります。
例えば、
「月給25万円・年間休日105日・残業月40時間」
という会社と、
「月給30万円・年間休日120日・残業月20時間」
という会社があれば、後者を選ぶ人が増えるのは自然なことです。
つまり、人手不足は労働者にとって、より良い企業へ移るきっかけにもなります。
人手不足が続けば、労働条件の悪い企業から順番に人材が流出する可能性があります。
社員が退職する
↓
新しい人材を採用できない
↓
残った社員の負担が増える
↓
さらに退職者が増える
↓
売上やサービス提供能力が低下する
↓
利益が減少する
↓
事業継続が困難になる
このような悪循環です。
特に、低賃金や長時間労働を前提として成立していたビジネスモデルは、人手不足によって維持できなくなる可能性があります。
その意味では、人手不足は単なる「人材不足」ではなく、企業の経営体質を問う試験になっているとも言えます。
今後の日本では、人材を安く使うことを前提とした経営は難しくなっていくでしょう。
企業が生き残るためには、
- 賃金を上げる
- 休日を増やす
- 残業を減らす
- 職場環境を改善する
- DX・AIを導入する
- 業務を効率化する
- 人材育成に投資する
といった取り組みが必要になります。
特に重要なのが「省人化」です。
人が集まらないのであれば、単純に採用人数を増やすのではなく、AIやIT、ロボットなどを活用して、少ない人数でも事業を運営できる仕組みを作る必要があります。
人手不足倒産の増加は、短期的には経済にとってマイナスです。
しかし、長期的に見ると必ずしも悪いことばかりではありません。
生産性が低く、労働条件も悪い企業が退出し、その人材がより生産性の高い企業へ移動すれば、日本経済全体の生産性向上につながる可能性があります。
これまで日本では、
「会社を守るために人が我慢する」
という構造が存在しました。
これからは、
「人材を確保するために会社が変わる」
時代になるのかもしれません。
人手不足倒産が増えている背景には、少子高齢化による労働人口の減少があります。
しかし、それだけではありません。
低賃金、長時間労働、休日の少なさ、職場環境の悪さなどを改善できない企業ほど、人材流出の影響を受けやすくなっています。
その意味では、人手不足は日本企業に対して、
「本当にこの労働条件で人材を確保できるのか」
を突きつけています。
もちろん、人手不足倒産のすべてがブラック企業というわけではありません。
それでも今後、人材不足が深刻になるほど、「人を大切にしない企業」や「生産性の低い企業」が淘汰される可能性は高まるでしょう。
人手不足は、日本企業にとって危機であると同時に、古い経営体質を変えるきっかけにもなっています。
これからの企業経営では、「人を安く雇う」ことではなく、「人に選ばれる会社をつくる」ことが生き残りの条件になっていくのではないでしょうか。
