(出典 防衛省)
防衛省は、2018年夏に、1「純国産開発」、2「国際共同開発」、3「輸入」の3つの選択肢から方向性を決定する予定だった。
米航空大手「ロッキード・マーチン」は防衛省に「F-22を主体に改修し、日本企業にエンジンを含む開発生産分担比率50%以上を認める」開発計画を提出したが、この計画は採用されなかった。
防衛省の立場は、国際共同開発と言えども、日本が主導権を握るものでなければ認めないだろう。
次期主力戦闘機の「開発費(約2兆円)」と「40年間の維持費(約2兆円)」の総事業費は4兆円とも言われ、日本単独開発では高コストになる。
100機製造するとしてもトータルコストは1機当たり400億円と高額になる。そのため「国際共同開発」により生産機数を大幅に増加させ、1機当たりのコストを下げる狙いがあったと思われる。
国際共同開発する候補企業
国際共同開発する候補企業は、三菱重工(日本)、ボーイング(アメリカ)、ロッキード・マーチン(アメリカ)、BAEシステムズ(イギリス)と見られる。
しかし、アメリカはF-22の後継機となる第6世代機の開発計画が具体化していない。
一方、イギリスはEU離脱中で、総額4兆円の戦闘機開発を日英2か国だけで共同開発するのは困難と見られる。またイギリスは次世代戦闘機「テンペスト」を2025年から開発をスタートする方針だが、日本はもう少し早く開発をしたいという事情があり、日本の共同開発は海外パートナー企業の選定に難航してきた。
結果的には、防衛省はアメリカ企業と共同開発を行い、イギリス企業からは部品調達に止める方針を固めたとされる。
2020年4月から防衛装備庁内に次期主力戦闘機の設計や契約実務を担う航空自衛官や技官からなる専属チーム約30人を発足させた。2020年末までにアメリカ企業、イギリス企業との共同開発の枠組みを正式に決定する方針。
中国は射程400kmのロシア製地対空ミサイル「S-400」を2019年までに配備を開始したとされる。
中国大陸から尖閣列島までの最短距離は330kmで「S-400」が配備されると、自衛隊は尖閣列島の航空優勢を失う可能性がある。
また、2030年~2040年以降は無人機が主力になる可能性もあり、有人戦闘機であるF-3戦闘機の開発そのものに懐疑的な意見がでてきた。
防衛省は2016年7月に次期主力戦闘機の開発製造について入札を準備を開始した。当初、最終選定は2018年夏、F-3の就役を2028年に予定していたが遅れている。
したがって、F-3の就役は2035年ころなる可能性が高い。
応札企業としては、三菱重工(日本)、ボーイング(アメリカ)、ロッキード・マーチン(アメリカ)、BAEシステムズ(イギリス)が候補になっている。
なぜ入札なのか?
防衛省は次期主力戦闘機入札について、国産、輸入とも明言はしていない。しかし、第6世代戦闘機は日本のF-3とアメリカのF-22しかなく、そのどちらかになる。
しかしF-22はアメリカがすでに生産中止しており、生産再開の検討の動きもあるが、可能性は低い。したがって事実上、次期主力戦闘機は国産のF-3となる。技術的にも日本単独でステルス戦闘機の開発は十分可能だ。
では、なぜ入札の形式になるのかというと、開発費だけで2兆円~3兆円、運用40年の保守費用を含めると4兆円という巨額費用になるからだ。防衛省の計画ではF-3を100機調達する予定で、1機あたりの価格は400億円となる。
この高額な戦闘機は、国会、政府から批判され、F-3開発計画自体がとん挫する可能性がある。そこで、欧米のメーカーも巻き込み世界販売することで、1機あたりのコストを下げる計画を考えている。
具体的には、日本単独で100機製造する場合、1機あたりのコストは400億円となるが、日米欧の共同開発で300機製造する場合、1機あたりコストは250億円~300億円まで下がると予想される。
イギリス
日本はイギリスと「空対空ミサイル」を共同開発しているが、次世代ステルス戦闘機の共同開発をするかどうかは、未定。
米国
現時点で圧倒的性能を誇るF-22は生産終了、F-35はやや性能が劣るという状態。米国の次期ステルス戦闘機は2030年初飛行の予定で、実戦配備は2035年頃になる。
アメリカの次世代戦闘機の開発が遅れる場合もある。したがって、2035年頃、実戦配備される日本のF-3を保険の意味で共同開発するメリットがある。しかも、共同開発の技術をアメリカの次期ステルス機に反映することもできる。
また、アメリカの航空機メーカーはF-22を輸出できなかったことから、ステルス戦闘機としてはF-35しか輸出できない。したがって、アメリカにとっても日本と共同開発するメリットある。
日本にとっても、戦闘機を外国に輸出した経験がないので、欧米メーカーの販売網を利用できるというメリットがある。
IHIは高性能エンジン「ハイパワースリムエンジン(HSE)」(XF9-1)の開発に成功し、2018年6月29日に防衛装備庁に納入した。
次世代戦闘機用エンジンが完成したことで、日本は技術的には単独でF-3戦闘機を完成することができることになった。
しかし、航空自衛隊がF-3を100機調達するとしても「開発費」と「40年間の維持費用」で4兆円と高額になる。したがってコストを下げるためには、世界販売するしかない。
ところが、日本のメーカーには戦闘機の国際販売ノウハウがない。そこで欧米メーカーとの共同生産が浮上したと思われる。