原油価格の最近の動き
2016/9/28 石油輸出国機構(OPEC)は、8年ぶりに減産合意した。加盟14か国の原油生産量の合計を日量3,250万バレル~3,300万バレルに制限する。
長らく経済制裁を受け原油輸出できなかったイランは増産を主張していたが、ザンギャネ石油相は一転減産合意したで、全体の減産合意ができた。
2016年8月のOPEC加盟国の原油生産量は日量3,324万バレルであり、実質的には現状推認で、需給関係には大きな変化はない。
イランは経済制裁中にブラックマーケットに原油を輸出していたと言われ、減産の実効性があるか不透明な部分がある。
しかしながら、これ以上の増産をしないという内容により増産懸念が払拭されたことで、原油価格は安定的に推移すると予想される。
2016年11月30日のスイスでのOPEC総会で正式決定する予定。
2015末~2016年前半に原油価格が下落した要因
原油価格下落の原因(1)OPECが減産合意できなかった
2015/12/4に開いたOPEC総会で日量3,000万バレルまでの減産に合意できなかった。現在のOPEC加盟国の原油生産量は日量3,150万バレルと言われる。
原油価格下落の原因(2)アメリカの石油在庫が85年ぶりの高水準
米エネルギー情報局(EIA)の石油在庫統計(2015/11/27)で アメリカの原油在庫は4億9000万バレル、ガソリンが2億1700万バレル、軽油が1億4400万バレルと10月としては1930年以来の85年ぶりの高水準に達した。
原油価格下落の原因(3)原油先物市場で大量の売りポジションが積みがった
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表したデータでは、WTIの先物に大量の売りポジションがあり、大量の先物の売りにより、原油価格が下落したと考えられる。
アメリカ政府の政策
アメリカは、ロシアのクリミア侵攻に対して、原油価格を下げ原油輸出で経済を維持しているロシアを財政的に締め付ける政策をとっている。
これに対してロシアはシリア反政府勢力を空爆し、暗に原油価格高騰を狙ったと言われる。
また、米国は、イラン原油輸出再開でイランに資金が集まることを懸念しており、これも原油価格を低下させる要因のひとつになっている。
アメリカのシェールオイル
米国のシェールオイルの採算コストは1バレル70~90ドルと思われていたが、それは数年前の新規油田の採算コストだ。
現在は、新技術により採算コストは下落し、新規油田で1バレル60ドル、既存油田では1バレル25~45ドルまで低下したと言われる。
したがって1バレル40ドル近辺でも既存油田からの産出は続く。しかし、新規掘削については、採算割れの状態で、リグ(掘削装置)稼働数は2014年約1,600基だったのが2015年には約650基と大幅に減少している。
サウジアラビアの国内事情
サウジアラビアは治安悪化懸念から、国民に高福祉政策を実施し、国民の政府批判をかわす政策をとっている。そのため、安くても石油を大量に売って、資金を得る必要がある。
原油価格の下落を容認することで、競争相手のシェールオイルを採算割れの状態に追い込む戦略だ。
サウジアラビアの財政は単年度赤字に転落したが、1バレル=100ドル時代に資金を蓄積し、今後5年程度は財政赤字に耐えられる。
サウジラアビアの原油コスト
サウジアラビアの原油産出コストは1バレル4~10ドルと言われ、市場価格が1バレル=30ドル台でも十分に利益が出るので、今後も生産を維持する方針
原油価格の今後の見通し
今後2~3年は、サウジアラビアとシェールオイルの価格競争が続くと予想される。サウジアラビアは単年度財政赤字だが、資産を蓄積しており今後5年程度は財政余力がある。
一方、シェールオイル側も技術革新で生産コストを25~45ドルまで下げてきており、簡単には減産しない。
したがって原油価格が大幅に回復することはなく30~50ドル近辺で推移する可能性が高い。
ただ、冬季には暖房用の石油需要が増加する傾向になり、一時的に原油価格が回復する可能性もある。
ヘッジファンドの動き
ヘッジファンドはオイルマネーを運用していると言われる。そのヘッジファンドは原油先物売りで巨額の利益を上げている。
したがって、産油国関係者は原油価格が下落しても、ヘッジファンドからの配当で利益を得ている可能性がある。
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